病気のために1年間まるまる仕事を休んだ被用者であっても、雇用主は病休期間中の年次有給休暇を保証しなければならない。例えば2010年1月1日~12月31日まで病休を取った被用者であっても、同年の有給休暇を病休明けに取得できるのである。働いていない者が有給休暇を取得できるというのは理不尽なような気もするが、欧州連合(EU)の欧州司法裁判所が下した判決で判例が確定しているため、愚痴を言っても始まらない。
\有給休暇の日数は法律で定められており、ドイツでは週6日勤務の場合24日、同5日は20日、同4日は16日となっている。週1日当たり年4日の有給が与えられる計算だ。
\法定の有給日数は最低基準であり、日数を増やすことは可能だ。事実、多くの業界では労使協定で上乗せが行われている。
\では、長期病欠した被用者はこの上乗せ分についても取得する権利があるのだろうか。今回はこの問題をラインラント・ファルツ州労働裁判所が昨年8月に下した判決(訴訟番号:10 Sa 244/10)に即してお伝えする。
\裁判を起こしたのは2007年6月23日~09年10月7日までの期間、病気休業した市の職員。週に5日勤務のため法定の有給日数は20日だったが、労使協定で年30日の有給が取り決められていたため、07年と08年について各30日の有給を申請した。これに対し雇用主である市は法定日数の各20日については権利を認めたものの、労使協定に基づく各10日の上乗せ分については受け入れなかったため、裁判となった。
\第1審のコブレンツ労働裁判所が下した判決は原告敗訴、第2審のラインラント・ファルツ州労裁も1審を支持する判決を下した。判決理由で裁判官はEU法で保障されているのは法定有給休暇の取得のみで、それを超える日数については取得権を裏付ける法的な根拠がないとの判断を示した。判例が確定していないケースに当たるため、最高裁への上告を認めている。
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