ベルリン工科大学などの研究チームがフェムト秒(フェムトは千兆分の1)スケールで試料を連続撮影する技術を世界で初めて開発した。従来の手法では1回につき1つの画像しか撮影できなかったが、2コマ連続撮影に成功したことで、フェムト秒で起こるナノサイズの物質の動きを直接映像としてとらえる「分子映像」の実現に1歩近づいた。
\フェムト秒スケールの分子変化の撮影では従来、試料にフェムト秒光パルスを照射して原子や分子に変化(振動)を起こさせ、最初に照射した光とは別の光(フェムト秒光パルス)で観測するという手法をとってきた。動きを連続してとらえるには、照射から観測までの経過時間を少しずつ変えて観測する作業を繰り返したうえで、それぞれの観測から得られた静止画像(シングルショット)をつなぎ合わせるため、5枚からなる動きをとらえるためには5回の作業が必要となり、1回の照射で2つ(あるいはそれ以上)の連続画像を得ることはできなかった。
\ベルリン工科大学、ヘルムホルツ物質・エネルギー研究センター、ミュンスター大学の合同研究チームはこれを踏まえ、1回の露光で連続して観測できる技術の開発に取り組んだ。
\連続観測を実現するにはまず、フェムト秒光パルスの時間間隔を正確に制御することが必要で、チームはフェムト秒シングルパルスをオートコリレータに通して2分割。一方はそのまま、もう一方はオートコリレータの中で迂回させて、50フェムト秒の時差を作ることに成功した。
\連続観察の課題に向けてはX線ホログラフィーという手法を用い、フェムト秒スケールで全く別々の2つの画像を記録する手法を開発した。2つの分割光によって観察されたホログラムからそれぞれの画像をコンピューターで再構成する。2つのホログラフが重なると輪郭が不明瞭になるなど苦難の連続だったというが、悪戦苦闘の末、連続画像の再構成に成功した。
\今回の研究成果は『Nature Photonics』に掲載された。
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