パソコンソフトなどで採用されているグラフィカルユーザーインターフェース(GUI=画面上のアイコンやメニューとマウスなどのポインティングデバイスを用いて直観的な操作を可能にするユーザインタフェース=)が著作権保護の対象に当たるかをめぐって争われていた裁判で、欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)はこのほど、「原則として対象外」との判断を示した。GUIは「コンピューターソフトという表現形式そのものではなく、ソフトが実行した情報処理の“結果”に過ぎず、コンピューターソフトの法的保護に関するEU指令の対象には当たらない」と結論づけた。(訴訟番号:C-393/09)
\今回の係争はチェコのソフトウエア保護団体BSAが2001年、同国の文化省に対してソフトウエア著作権を包括的に管理する権利を求めて拒否されたことが発端。BSAはその後も申請を繰り返したが、文化省は05年、「著作権で保護されるのはソースコードとオブジェクトコードだけで、プログラムがモニターに表示した画像は対象外」として改めて申請を却下したため、BSAは同国の著作権保護法ではコンピューターソフトのGUIも含まれている」として提訴した。
\同国の最高裁判所は、チェコの国内法とEU法では判断基準がやや異なるとして2009年10月に審理を中断しECJの判断を仰いだ。EUJは「係争の発端はEU加盟以前」としながらも、チェコ文化省がEU加盟後の05年にも申請を却下していることなどを踏まえ、審理申請を受理した。
\EUJの裁判官は判決の中で、GUIはソフトウエアの著作権保護に関するEU指令(91/250/EC、第1条第2項)が規定するソフトウエアの「表現形式」には当たらないとの判断を示した。その一方で、「情報社会における著作権およびそれに関連する権利の側面についての調和に関する欧州議会および理事会指令」(2001/29/EC) の規定に従うと、明らかに独自性が認められるGUIは保護の対象になるとも指摘。その上でチェコ最高裁に対し、当該の係争が「独自性の基準」を満たすかどうか調べたうえで最終的な判断を下すよう指示した。
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