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2011/1/26

総合 - ドイツ経済ニュース

雇用拡大で人材確保が困難に、中小企業の売上は300億ユーロ目減り

この記事の要約

雇用の回復がドイツで進んでいる。昨年12月の失業者数は301万6,000人となり、前年同月から26万人減少。戦後最悪を記録した2005年2月(521万6,000人)からは実に220万人も少なくなった。連邦雇用庁(BA)の […]

雇用の回復がドイツで進んでいる。昨年12月の失業者数は301万6,000人となり、前年同月から26万人減少。戦後最悪を記録した2005年2月(521万6,000人)からは実に220万人も少なくなった。連邦雇用庁(BA)の長期予測によると、2020年にはおよそ40年ぶりに完全雇用を実現する見通しだ。ただ、労働市場が好転する一方で、人材不足は深刻化。経済の足かせ要因ともなっている。

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24日付『南ドイツ新聞』によると、DAX(ドイツ株価指数)採用30社のなかで昨年、世界の従業員数を増やしたのは15社、削減したのも14社とともに多かった。今年の計画では拡大が14社あるのに対し、削減は3社と大幅に減っている。

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トヨタを追撃する自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は今後3~5年で最大5万人を新規採用。ドイツだけでも5,000~6,000人を雇い入れる見通しだ。事業再編にほぼめどを付けた電機大手のシーメンスでは世界全体の採用枠が1万2,000人(うちドイツは3,000人)に上る。また派遣社員2,500人を2月1日付で正社員に引き上げるとの報道もある。半導体大手のインフィニオンはアジアを中心に新規採用を進める意向だ。

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雇用拡大の動きは中小企業でも鮮明になっている。会計監査大手のアーンスト・アンド・ヤング(E&Y)が年商500万~2億5,000万ユーロの独企業を対象に実施したアンケート調査によると、今後半年間に従業員数を「増やす」見通しとの回答は27%に達し、「減らす」(6%)を21ポイントも上回った。特にブレーメン、ハンブルク、ノルトライン・ヴェストファーレン、ヘッセン州で新規採用の動きが活発という。

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ただ、求人活動の活発化に伴い人材を確保することは難しくなっており、E&Yの調査では「しっかりした技能を持つ社員の獲得」が難しいと回答した企業が全体の73%を占めた。従業員数が不足しているため受注を断るケースも多く、E&Yの試算では人材不足による中小企業の売上目減り額はドイツ全体で年294億ユーロに上る。

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女性・移民の活用が不可欠に

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ドイツでは景気回復と同時に生産年齢人口の減少も今後、急速に進んでいく。少子高齢化を受けて人口が減少しているためだ。BAが20日に発表した労働市場予測レポートによると、現状を放置した場合、「潜在的な就労人口( 実際に働いている人と論理的に就労可能な人の合計)」は2010年の4,460万人から2025年には3,810万人へと650万人も減少する。

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BAはこれに伴う人材不足を解消するための措置として◇女性の就労率と就労時間を増やし、フルタイム就労換算で最大300万人の労働力を創出する◇専門技能を持った移民を新規に最大80万人受け入れる◇生徒や大学生、職業訓練生のドロップアウト率を大幅に引き下げる◇週労働時間を現在の平均42時間から44時間へと引き上げる――などを提言している。

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