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2011/1/26

ゲシェフトフューラーの豆知識

無断の有給休暇取得、即時解雇にならないケースも

この記事の要約

有給休暇の申請を拒否されたにもかかわらず休暇を取得した被用者を雇用主は即時解雇(fristlose Kuendigung)できる。これについては雇用問題の最高裁である連邦労働裁判所(BAG)が1996年に下した判決(訴訟 […]

有給休暇の申請を拒否されたにもかかわらず休暇を取得した被用者を雇用主は即時解雇(fristlose Kuendigung)できる。これについては雇用問題の最高裁である連邦労働裁判所(BAG)が1996年に下した判決(訴訟番号:2 AZR 357/95)で判例が確定している。だが、ケースによってはこの原則が当てはまらないこともある。今回はベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が昨年11月に下した判決(10 Sa 1823/10)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのは1978年から労働局(BA)で勤務してきた51歳の女性職員で、2009年9月21日から病休を取得していた。翌年1月にBAに宛てた文書で◇リハビリ申請を出すよう健康保険組合から要求された◇病気からの回復を促進するため病休開け直後に有給休暇を取得するよう主治医からアドバイスを受けた――と連絡、2月22日からの有給休暇取得を願い出た。

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これに対し、上司は人手不足を理由に申請を却下。その後の連絡のなかで同日に出勤しなかった場合は解雇せざるを得ない旨を伝えたが、女性職員がこれを無視して有給休暇に入ったため即時解雇を通告した。原告はこれを不当として提訴した。

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第1審のベルリン労働裁判所は原告の訴えを棄却した。これに対し第2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁は、こうしたケースでは通常、即時解雇が妥当だとしながらも、本件では即時解雇は行き過ぎで、解雇予告期間付の通常解雇が妥当だとの判断を示した。裁判官はその理由として、原告は◇勤続年数が31年と長く、これまで処分を受けることなく勤務してきた◇これまでの職業経験で労働局の業務以外を行ったことがないうえ、年齢も高いため再就職のチャンスがほとんどない◇リハビリを申請する事実と主治医から有給取得のアドバイス受けた事実をBAに伝えることで、病気から完全には快復していないことを明らかにしていた◇通常解雇とすることで解雇が発効するまでの期間が数カ月先に伸びその間原告が引き続き勤務しても、業務に支障が出るとは思われない――などを挙げた。

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通常解雇は予告期間の分だけ、給与支給が保証されるため、被用者にとっては即時解雇に比べ経済的な損失が緩和される。

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