国際的に保護されている特許技術が、インド国内で特許保護の対象とみなされず現地メーカーにコピーされるケースが相次いでいる。背景にはインドの経済発展を最優先する当局の姿勢があり、「中国と異なりインドでは知財権侵害の心配はない」と考え重要なノウハウを安易に供与することは極めて危険だと専門家は警鐘を鳴らす。独経済紙『ハンデルスブラット(HB)』が1月25日付で報じた。
\風力発電装置大手のEnerconは1994年にインドに進出し、現地富豪のメヘラ家と合弁でEnercon India Limited(EIL)を設立した。しかし、「将来の戦略方針の相違」が原因となり05年に両者の関係が悪化。メヘラ家はこれを機にEnerconをEILから締め出して実質的な経営権を掌握し、08年からはEnerconの技術が組み込まれた製品を生産している。
\一方、EnerconはEILに過半数出資していながら何の決定権も行使できず、特許使用料はおろか利益配当さえ受けられないという。同社はこれを不当として複数の訴訟を起こしたものの、裁判は遅々として進んでいない。同国の知的財産法上訴委員会(IPAB)は昨年12月、Enerconの保有する12の特許を「インド国内では無効」と裁定しており、勝訴は絶望的な状況だ。同委員会は審理の際に、「インドの“国益”は一企業の技術に付随する権利よりも重視されなければならない」との判断を示したとされる。同社のケットヴィヒ社長は「我々はインドで知的財産を没収されたようなものだ」と述べ、憤りをあらわにした。
\インドで特許が無効扱いされたのはこれが初めてではない。独バイエルやスイスのロシュ、仏サノフィ・アベンティスなど大手製薬会社も、特許薬を現地の後発医薬品メーカーに販売されている。インドの製薬会社はすべて後発医薬品に特化しており、政府が医薬品の特許保護に消極的な姿勢がうかがわれる。
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