透明電導膜の素材にカーボンナノチューブ(CNT)を用いたタッチスクリーンをフラウンホーファー生産工学自動化研究所(IPA)が開発した。現在主流の酸化インジウムスズ(ITO)製の透明電導膜と異なり資源枯渇の懸念のあるインジウムを使用しないのが強み。ありふれた炭素原子を使うことで低価格化と安定・大量供給が可能になる。
\ITOは透明電導膜として液晶ディスプレイやフラットパネルなど広範囲で使用されているが、普及の拡大や画面の大型化にともない、主原料のインジウムの供給が不足。価格高騰や安定供給の問題が浮上している。このため、産業界は特定国の資源政策や埋蔵偏在性に左右されない「脱インジウム(インジウムフリー)部材」の開発を迫られており、CNTはITOに代わる透明導電性薄膜として期待を集めている。
\IPAが開発した手法は、PETフィルム基板上に複数のCNTを含む混合物を分散させ、導電性ポリマー溶液でコーティングして成膜するというもの。IPAの担当者によると、導電率はITOに比べやや低いものの、家電製品向けとしては「ほぼ実用に足りる水準」という。また、ITOではプラスチックフィルム基板上に成膜すると、ガラス基板に比べ耐水性や耐薬品性、ガスバリア性、密着性が劣るという難点があったが、CNTはプラスチック基板への密着性が高く、安定性が飛躍的に向上したという。
\IPAは試作品を今月16日から東京で開催される国際ナノテクノロジー総合展(nano tech)に出展する予定だ。
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