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2011/2/2

総合 - ドイツ経済ニュース

経営難企業の欠損金繰越控除は違法、欧州委が回収命令

この記事の要約

欧州連合(EU)の欧州委員会は1月26日、ドイツ政府が景気対策の一環として導入した企業向け減税措置のうち、経営難に陥った企業に対し、買収などによって株主構造が著しく変化した場合も欠損金の繰越控除を認める制度はEUの国家補 […]

欧州連合(EU)の欧州委員会は1月26日、ドイツ政府が景気対策の一環として導入した企業向け減税措置のうち、経営難に陥った企業に対し、買収などによって株主構造が著しく変化した場合も欠損金の繰越控除を認める制度はEUの国家補助規定に違反するとの見解をまとめた。独政府に対し、控除分の速やかな回収を命じるとともに、2カ月以内に同制度の適用を受けた企業のリストと控除額を報告するよう求めている。

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欧州委が問題視しているのは、独政府が2009年7月に導入した就労者と企業に対する総額100億ユーロの減税措置のうち、経営難に陥った企業を対象とする「Sanierungsklausel(再建条項)」と呼ばれる軽減策。現行制度では買収などによって株主構造が著しく変化した場合、その企業は欠損金を翌年以降に繰り越せないことになっているが、再建条項では経営難にある企業が買収された場合でも、欠損金を繰り越して控除を受けることができる。欧州委は08年1月に遡って導入された同条項が経営難にある企業に対する実質的な国家補助にあたるとの見方を強め、昨年2月から調査を進めていた。

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欧州委は再建条項について、税金逃れの目的で経営難にある企業を傘下に収め、買収で発生した損失を利益と相殺して税控除を受けることも理論上は可能と指摘。ドイツ当局者や関係する企業の関係者などから聞き取りを行った結果、同条項は明らかに経営難に陥った企業とその買い手を優遇する措置で、特定の企業に対する違法な補助金にあたると結論づけた。欧州委はまた、同制度の導入にあたり、独側から事前の報告がなかったことや、当初は金融危機後の時限措置として導入されたにもかかわらず、09年末に恒久的な措置に置き換えられた点も問題視している。

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独財務省の報道官は今回の事態を受け、欧州委が再建条項について調査を開始した直後の昨年4月に同制度を廃止したと説明。欧州委の決定に関しては、現在分析を行っている段階だと述べるにとどめた。

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