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2011/2/2

ゲシェフトフューラーの豆知識

研修コストの返還請求、研修終了前に退職なら妥当

この記事の要約

会社負担でMBA(経営学修士)の資格を取得した社員が、復職後間もなく退職するということが以前、日本で頻発し、大きな話題となった。会社側としては人材育成の一環として大金を投じるわけだから、費用の返還を求めるのは当然のことだ […]

会社負担でMBA(経営学修士)の資格を取得した社員が、復職後間もなく退職するということが以前、日本で頻発し、大きな話題となった。会社側としては人材育成の一環として大金を投じるわけだから、費用の返還を求めるのは当然のことだろう。

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同じようなことはドイツでも起きている。今回は最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が1月21日に下した判決(3 AZR 621/08)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判は貯蓄銀行系の団体が同団体を退職した職員Aを相手取って起こした。Aは2002年2月の採用で、4年後の06年6月、バイエルン州貯蓄銀行・振替連合会の研修コースを受講するため勤務免除(Freistellung)措置を受けることで雇用主と合意。その際、(1)研修参加費と試験費用は自ら負担(2)受講期間中の給与は引き続き受給(3)研修終了前に退職した場合は、雇用主が負担したコスト(研修期間中の給与)を返済――することを取り決めた。

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Aは計4つある研修課程のうち2つ目までを終了した段階で同団体を退職した。これを受けて雇用主は(3)の規定に基づき返済を要求。Aが拒否したため提訴した。

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前審のミュンヘン州労働裁判所は原告勝訴を言い渡し、連邦労裁もこの判決を支持した。判決理由で裁判官は、「研修を修了すれば被用者は金銭的な利益(ここでは研修期間中の給与受給)を享受する」と指摘。そのうえで、研修終了前に退職した場合は支給した給与を返還するとした規定は、普通契約約款作成者(ここでは雇用主)の契約パートナー(ここでは被用者)に不利になる取り決めを禁止した民法典307条1項の規定に抵触しないとの判断を示した。

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