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2011/2/9

経済産業情報

分子スイッチ、室温での制御に成功

この記事の要約

室温で動作するナノメートルオーダーのスピンスイッチを、キール大学のライナー・ヘルゲス教授を中心とする研究チームが発見した。有機ニッケル化合物に光応答性リガンドが結合したもので、光を照射して起こる光異性化反応と、これに付随 […]

室温で動作するナノメートルオーダーのスピンスイッチを、キール大学のライナー・ヘルゲス教授を中心とする研究チームが発見した。有機ニッケル化合物に光応答性リガンドが結合したもので、光を照射して起こる光異性化反応と、これに付随して起こるニッケルイオンの磁性変化を利用して制御できる。チームは今回の発見が新たなナノスイッチの開発につながると期待を寄せる。

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これまでに発見されている分子スイッチのほとんどは、超低温状態か巨大分子(バルク高分子)かのいずれかに限定されていた。キール大の有機化学研と無機化学研のスタッフから成るチームはこれを踏まえ、ナノメートルレベルの大きさで、かつ室温で制御可能な分子スピンスイッチの探索に取り組んだ。

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同チームが見出した分子スイッチは、ポルフィリンニッケル錯体と、ピリジンリガンドを含むアゾ化合物がつながった構造で、レコードプレーヤーとレコードアームのような格好をしている。大きさは平均1.2ナノメートル。

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アゾ化合物には光を当てるとシス-トランス異性体に変化する「光異性化」という性質があり、キール大の分子スイッチはこれを利用する。スイッチに青緑光(波長500ナノメートル)を照射するとアゾ化合物はシス化、アームが曲がってポルフィリンニッケル錯体の窒素原子がニッケル原子の真上の位置に来る。この位置関係においてニッケルイオンに不対電子が生じて磁性が生じ、スイッチがオンになる。逆に青紫(波長435ナノメートル)の光を照射すると、アゾ化合物はトランス化してピリジンリガンドがニッケル原子から引き離される。これによってニッケル原子の不対電子がなくなるため磁性が失われ、スイッチがオフになる。反応は非常に安定しており、1万回反応を繰り返しても劣化は見られなかったという。

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研究の結果は『Science』(1月28日号)に掲載された。

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