ハンブルク州議会選挙が20日あり、即日開票の結果、中道左派の社会民主党(SPD)が単独で過半数議席を獲得し約9年半ぶりに政権を奪回した。中道右派の与党・キリスト教民主同盟(CDU)は得票率が前回から半減。同州議会選で過去最低を記録した。ドイツでは今年、さらに6州で州議選が予定されており、CDUを中心とする連邦(国)レベルの与党が今後も州議選で敗北を続けると、メルケル連邦政権の法案実現能力は大幅に低下する恐れがある。
\SPDはハンブルク州議選で得票率を2008年に行われた前回選挙の34.1%から48.3%へと14ポイント以上、拡大した。これにより121議席中の62議席を獲得。1982年の選挙以来、29年ぶりに単独過半数を制した。
\一方、01年から政権を維持してきたCDUは得票率が前回の42.6%から21.9%へと減少し、議席数も28へと半減した。CDUから流出した票はSPDのほか、緑の党と中道右派の自由民主党(FDP)にも流れ込み、FDPは議席獲得に必要な5%の得票率をおよそ10年ぶりに突破した。
\CDUが失速したのは連立先の緑の党と共同で取り組んだ政策が市民の支持を得られなかったためだ。特に生徒の進路を小学校4年の終了後に振り分ける伝統的なドイツの学制を6年終了後の振り分けに変更する政策は昨夏の州民投票で否決。これを受けCDUのフォンボイスト州首相は辞任し、同党は大きな痛手を受けた。
\一方、SPDは州政府の保育所料金値上げ政策の撤回を打ち出すなど福祉重視の姿勢を提示。それと同時に元商工会議所会頭を次期経済相に起用する方針も打ち出して、左傾化を警戒する経済界や自営業者などの票を取り込んだ。
\これが奏功し、世論調査機関のWahlenが事前に実施した市民アンケート調査ではほぼすべての政策領域でSPDを支持する回答がCDU支持を大きく上回った。特に経済、財政、教育など伝統的にCDUが強い分野でSPDの評価が圧倒的に高かったことは注目に値する。SPDが国政レベルで野党に下った後に打ち出した構造改革からの離脱路線に修正がかかる可能性があるためだ。党の幹部の間ではすでに今後の路線をめぐるつばぜり合いが始まっている。
\ \ねじれ国会一段と進む恐れ
\ \州議選は今年、ザクセン・アンハルト、ラインラント・ファルツ、バーデン・ヴュルテンベルク(以上3月)、ブレーメン(5月)、メクレンブルク・フォーポマーン、べりリン(以上9月)の6州でも実施される。
\ドイツでは昨年以来、大型プロジェクトや原発稼働延長に反対する市民運動が急速に高まるなど、政治と市民の乖離(かいり)が目立っており、この不満に各党がどう対応するかが大きなポイントの1つになるとみられる。ただ、シュツットガルト駅近代化が典型的なように市民の批判を強く浴びているのは中道右派のCDUが目立つ。
\国政レベルの与党であるCDUが州議選での敗北を続けると、州の代表で構成される連邦参議院(上院)では与党3党(CDUと同党の姉妹政党キリスト教社会同盟=CSU=、およびFDP)の持ち票が大幅に減少し、政府法案の成立がこれまで以上に滞ることになる。昨年夏以降、同院で過半数(35以上)を割り込んでいる3党にとっては是が非でも回避したいシナリオだ。すでに求職者基礎保障制度(「ハルツ4」)のルール改正では野党が強く反対したため法案成立が大きく遅れている。
\