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2011/2/23

経済産業情報

アモルファス分子の表面構造を解析

この記事の要約

アモルファス分子の表面ナノ構造を解析することに、墺グラーツ大学を中心とする国際研究チームが世界で初めて成功した。X線非弾性散乱測定と呼ばれる手法とコンピューターによる量子力学計算を組み合わせたのが特徴で、これまでほとんど […]

アモルファス分子の表面ナノ構造を解析することに、墺グラーツ大学を中心とする国際研究チームが世界で初めて成功した。X線非弾性散乱測定と呼ばれる手法とコンピューターによる量子力学計算を組み合わせたのが特徴で、これまでほとんど研究が進んでいないアモルファス分子の構造解明に貢献できるとチームは期待を寄せる。

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固体の状態には大きく分けて、分子構造に一定の繰り返しパターンがある結晶と、結晶構造を持たないアモルファス(非晶質)の2つがある。アモルファス状態は、結晶状態と同じ材料の場合でも物理・化学的な性質が大きく変わることがあるが、結晶構造を持たないためX線解析による分子構造解析や評価ができず、結晶状態との違いをナノレベルで解明することはこれまでほとんど不可能だった。

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グラーツ大学のヴォルフラム・シュトイラー博士を中心とする研究チームはこの問題の解決に向けて「全反射」と呼ばれる性質に着目した。これはX線を平坦かつ平滑な物質表面にきわめて浅い角度で入射すると、X線が透過せずに物質の外部で全て反射するという性質で、反射光のパターンを分析することで構造解析が可能になる。また、X線は数ナノメートルから数100ナノメートルの深さまで侵入できるため、表面に露出していない内側の界面構造も合わせて調べることができる。

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研究チームは、コピー機の感光ドラムやX線検出センサーに使われるアモルファスセレン(a-Se)を用いて、X線非弾性散乱測定という手法で構造解析実験を行うとともに、非経験的分子軌道法、反経験的分子軌道法という2つの量子力学計算法を併用して分子構造を突きとめた。研究の成果は『Nature Communications』に掲載されている。

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