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2011/3/2

総合 - ドイツ経済ニュース

クラウドに情報通信技術業界が期待、市場規模は今年55%拡大

この記事の要約

世界最大の情報通信技術見本市CeBitが2月28日夜、ハノーバーで開幕した。今年は「クラウドのある仕事と生活」がメインテーマで、業界はクラウドの将来に大きな期待をかけている。ただ、同サービスの利用者となる消費者や企業の間 […]

世界最大の情報通信技術見本市CeBitが2月28日夜、ハノーバーで開幕した。今年は「クラウドのある仕事と生活」がメインテーマで、業界はクラウドの将来に大きな期待をかけている。ただ、同サービスの利用者となる消費者や企業の間ではクラウドに対する不信感や理解不足が目立っており、すそ野の拡大に向けては啓発活動や需要喚起の工夫が欠かせないようだ。

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クラウドはソフトウエアやデータをインターネットを通して提供するサービスで、企業やネットユーザーは必要に応じてそのつどダウンロードして利用する。データやソフトを手元のハードディスクなどに保存する必要がなくなるため、特に企業はハードウエアやシステム管理への投資を圧縮しコストを削減できる。

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市場の将来性に対する情報通信技術(ICT)業界の期待は大きく、独情報通信業界連盟(Bitkom)がCeBit参加企業を対象に行ったアンケート調査では「今年のトップテーマはクラウド」との回答が62%に達した。Bitkomも独クラウド市場規模が今年は前年比55%増の35億ユーロに拡大し、2015年には130億ユーロへと達すると予想している。(グラフ1、グラフ2を参照)

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クラウドサービス需要を大幅に拡大するには通信速度の引き上げが重要な課題となる。電気通信サービス各社はこれを踏まえて通信網の近代化に着手。ドイツテレコムは今年、国内10都市に光ファイバーケーブルを設置する。下り通信速度は1秒当たり最大1ギガビットに上る。同社はまた、次世代移動通信規格のLTEサービスも年内にケルンで開始する予定だ。1秒当たりの通信速度は100メガビットで、電話回線を利用したVDSLブロードバンド通信網の2倍に上る。LTE通信サービスは競合のボーダフォン、O2も準備している。

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4人に1人はクラウドの意味知らず

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ICT業界のこうした意気込みとは裏腹に、消費者や企業の反応は鈍いようだ。Bitkomの委託で市場調査機関Arisが14歳以上のネットユーザーを対象に実施したアンケート調査によると、有料のクラウドサービスを利用しているのは全体の2割にとどまった。クラウドを利用しない回答者に理由をたずねたところ、「メリットがない」が35%で最も多く、これに「複雑すぎる」が続いた。「クラウドという言葉の意味が分からない」も25%と少なくない。(グラフ3を参照)

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こうした現実を反映するように、CeBitを報じたテレビニュースや新聞報道ではクラウドの意味を視聴者・読者に解説するケースが目立つ。ドイツ語訳も「Wolke(雲)」「Datenwolke(データの雲)」などとまだ確定しておらず、事情を知らない消費者にとっては文字通り「雲をつかむような話」のようだ。

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一方、企業の間ではクラウドに対する警戒感が強い。クラウドサービスを手がけるDatevのディーター・ケンプ社長が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に語ったところによると、特に中小企業で機密流失を懸念する傾向が強いという。コンサルティング大手デロイトの関係者は『ハンデルスブラット』紙に対し、「セキュリティ上の懸念を取り除くことがクラウド普及のカギを握る」との見方を示した。クラウド上のデータへのアクセスを拒否されるなどトラブルが起きた時のサポート体制の拡充も緊急の課題だと指摘している。

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