欧州連合(EU)とドイツ政府の環境・エネルギー戦略を受けて1月に導入されたバイオエタノール混合ガソリン「E10」の販売が著しく低迷している。ドライバーの大多数がエンジン故障を恐れて給油を見合わせているためだ。政府は事態の打開に向け8日、自動車・エネルギー業界団体や消費者センターなどの代表を招いて緊急会合(ガソリンサミット)を開催。E10の給油が可能な車両に関する情報提供活動を強化する方針を打ち出した。ただ、こうした活動で消費者の不安感が解消されるかどうかは明らかでなく、需要が今後も伸び悩むようだと、E10販売そのものの見直しを迫られる恐れもある。
\E10はトウモロコシやテンサイなど植物由来のバイオエタノールをガソリンに10%混合した燃料で、ドイツでは1月に導入された。導入に向けた法案の成立が遅れた関係で、ガソリンスタンドでの販売開始は遅れたものの、現在は国内のスタンドの半数に当たる約1万5,000カ所で給油できる。
\E10の導入は交通セクターで利用するエネルギーの10%を2020年までに再生可能エネルギーでカバーするというEUの環境・エネルギー戦略に基づく措置だ。10%の同目標値の達成に向けた方策策定はEU各国に委ねられており、例えばハイブリッド車や電気自動車の普及促進政策を通して実現することもできる。
\E10の製造コストはエタノール混合比率5%ガソリン「E5」に比べ高い。それにもかかわらず燃料メーカーはE10の価格をE5よりも低く設定した。背景には、販売したガソリン(E5とE10 )の「バイオ比率(Bioquote)」*が平均で6.25%に達しないと制裁金を科されるという事情がある。E5の販売比率が高いと6.25%に届かないため、E10の価格を低くして需要を喚起する狙いだ。
\だが、ドライバーの反応は鈍く、E10は供給過多に陥っている。一方、1リットル当たりの価格が8セントほど高いE5(Super Plus)の需要は急増。極端な品薄状態となっている。これを受けて燃料業界はE10の生産量を大幅に引き下げた。
\ドライバーがE10に背を向けるのは同燃料に対応できない車両が少なからずあるためだ。自動車業界によると、ドイツで登録されている車の7%(約300万台)が該当する。これらの車にE10を給油すると、エンジンのゴム、樹脂、アルミニウム部品が痛み、不具合や事故につながる恐れがある。
\自動車業界はこうした問題を踏まえ、E10対応車と非対応車のリストを事前にインターネットで公開。また、ドライバーが製造元の自動車メーカーやディーラー、修理事業者に問い合わせれば、情報を得られるようにしていた。
\ \E10対応保証車の不具合、責任はメーカーに
\ \E10の利用が増えないのは、こうした措置が十分な効果を発揮しなかったことを意味する。このためガソリンサミットではドライバーへの広報活動を強化することが取り決められた。具体的には法的責任問題を理由にこれまで控えてきたガソリンスタンドでの情報提供が行われる。ドライバーは給油で立ち寄った際などに、E10対応車の包括リストを閲覧。自分の車が対応車かどうかをその場で把握できるようになる。
\同リストはメーカーが承認しているため、E10対応を保証した車両が給油で不具合を起こした場合は製造元ないし輸入業者が責任を負う。ドライバーに修理費負担の義務がないことを明確化することで、同燃料の普及を後押しする考えだ。
\自動車業界は今後、車台番号をインプットすれば対応車かどうかが分かるインターネットサイトの立ち上げも検討する。
\ \* エネルギー効率をベースとしたバイオ燃料の混合比率。エタノールはガソリンに比べエネルギー効率が約30%低いため、バイオ比率で6.25%を達成するには体積ベースで約8.3%のエタノールを混合しなければならない。
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