ドイツ最北端のジルト島沖にあるオフショア風力発電所の増設計画が中止に追い込まれそうだ。連邦環境保護庁(BfN)が「アビ(渡り鳥)の越冬地が長期的に破壊される恐れがある」として承認拒否の姿勢を表明したためで、北海のオフショア発電プロジェクトで野生動物の保護を理由に却下される初のケースとなる公算が高い。
\アビは北アメリカ大陸北部やユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季になると越冬のため北大西洋、北太平洋の沿岸部に南下する水鳥。主に洋上で生活する。『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙によると、アビは環境の変化に非常に敏感で、風力発電所から半径2キロ以内にはまったく生息せず、半径4キロ以内に近寄る個体も群れの半数程度にとどまる。また、船の通行も極端に嫌がる。
\アビは近年、個体数が大きく減少しており、国際自然保護連合(IUCN)の「絶滅の恐れのある生物種のリスト」(レッドリスト)に登録された。これを受けて同鳥の重要な飛来地であるユトランド半島西側海域(ドイチェ・ブーフト)は数年前、鳥類保護海域に指定された。
\問題となっているのは、オルデンブルクのSandbank Power社が運営するウィンドパーク「Sandbank24」の増設計画だ。Sandbank24は鳥類保護海域内にあるものの、保護海域に指定される以前に許可が下りたため建設が認められた。
\同社はこのほど、系列会社を通してSandbank24に隣接する海域に新たに40設備を設置する計画を打ち出した。増設予定地域は鳥類保護海域からは外れているが、BfNはアビの生息地が破壊されるとして強い懸念を表明、計画を認めない方針を固めた。
\オフショア風力発電の設置を実際に許可するのは連邦海運・水路庁(BSH)だが、2009年の連邦環境保護法(BNatSchG)改正によりBfNの発言権が強化されたため、BfNが反対を正式決定した場合、BSHもこれを支持するのはほぼ確実とみられる。
\