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2011/3/16

経済産業情報

マイナス30度で氷結せず、新たな表面構造開発

この記事の要約

極めて高い撥水性により優れた氷結防止性能を持つ表面構造をフラウンホーファー界面工学・バイオテクノロジー研究所(IGB)などのプロジェクトチームが開発した。ポリウレタンにプラズマを照射して特殊な凹凸表面を形成するのが特徴( […]

極めて高い撥水性により優れた氷結防止性能を持つ表面構造をフラウンホーファー界面工学・バイオテクノロジー研究所(IGB)などのプロジェクトチームが開発した。ポリウレタンにプラズマを照射して特殊な凹凸表面を形成するのが特徴(プラズマ表面改質)で、マイナス30度の環境でも着氷抑制効果は90%を超えるという。研究チームは今回の成果が、航空機の新たな凍結防止システム開発につながると期待を寄せる。

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航空機に氷が付着(着氷)すると揚力の低下や抗力の増加、失速、視界不良などを引きおこし、致命的な事故につながりかねない。着氷は雪の降る空港に駐機している時だけでなく、過冷却水(0℃以下でも凍っていない水)を含む雲の中を飛行するときにも起こりやすい。一度着氷すると短時間で氷が成長するため、飛行中には着氷しやすい領域をヒーターで加熱して着氷防止・除去することが一般的だ。ただ、加熱によって燃料が余分に消費されるため、環境・コスト上の負担が大きく、航空業界では新たな着氷防止技術への関心が高まっている。

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IGB、EADSなどが参加するプロジェクトチームは、過冷却水が氷に凝固するには、氷の“タネ”となる微小な氷の結晶(氷晶核)が必要なことに着目し、氷晶核が付着できない表面構造の開発に着手。耐衝撃性ポリウレタンにプラズマを照射し、表面に撥水性のポリマーを生成させることに成功した。表面の性質はプラズマガスの種類や処理温度、圧力、時間を変えることでコントロールできる。また、生成した表面構造はロール・ツー・ロール方式でフィルムにコーティングできるため、量産も可能という。

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今回の研究は連邦教育省(BMBF)が支援する機能性表面構造開発プロジェクト「Nanodyn」の1つで、IGB、EADS、ROWO Coatingなど8機関が参加している。

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