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2011/3/23

総合 - ドイツ経済ニュース

部品調達の先行きに不透明感、日本製品に対し放射能汚染の不安も

この記事の要約

東日本大震災がドイツの経済界に影を落としている。メーカーはハイテク部品などの供給が途絶えることを懸念。保険会社は巨額の保険金支払いが避けられない状況だ。電力業界は福島原発事故を受けて政府が原子力政策の見直しに翻弄されてい […]

東日本大震災がドイツの経済界に影を落としている。メーカーはハイテク部品などの供給が途絶えることを懸念。保険会社は巨額の保険金支払いが避けられない状況だ。電力業界は福島原発事故を受けて政府が原子力政策の見直しに翻弄されている(3月16日号を参照)。ただ、現時点で景気への影響を予想する専門家は少ない。

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日本から輸入する部品のほとんどは船便で輸送されている。このため、地震から日の浅い現時点で欧州工場の生産を停止したメーカーはほとんどない。ドイツ機械工業連盟(VDMA)やハイテク業界団体のBitkomは当面影響なしとの見方を示している。ただ、日本企業の操業再開が遅れると、電子部品を中心に供給が不足するのは確実。このため、フラウンホーファー物流・通信技術研究所でサプライチェーン問題に取り組み研究者は『南ドイツ新聞(SZ)』のインタビューで、今後数週間以内に日本以外の調達先を確保することが重要だと指摘した。

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ドイツメーカーが最も懸念しているのは付加価値の高い電子部品の調達だ。こうした部品では日本メーカーが高いシェアを持っており、代わりの調達先を見付けにくいという事情が背景にある。

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自動車大手オペルではすでにエンジン制御用の電子部品の在庫が不足し、21日にスペイン工場の操業を終日、停止。独アイゼナハ工場でも生産シフトを削減した。22日になって部品を米国から空輸し、危機をしのいだ。

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高級車大手BMWは直接取引がある日本の部品メーカーが地震で大きな被害を受けていないことを確認した。ただ、Tier-2(2次下請け)以下のメーカーの状況が把握できておらず、ディース取締役(調達担当)は15日の決算発表で「7~10日をめどに見通しが立てばよいのだが」との立場を示した。日本から調達した部品は特にライプチヒ、ミュンヘン、ディンゴルフィング、レーゲンスブルク工場で使用されているという。

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日本に工場を持つメーカーではダイムラーが川崎にある三菱ふそうの工場で一部部品の加工業務を23日からで再開する。車両生産については本格稼働を検討中とするにとどめ、具体的な日程は明らかにしていない。

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日本に計350の調達先を持つボッシュは調達網のチェックとともに部品確保に注力している。化学大手のBASFは安全性を確保するため、磯原(茨城県)、郡山(福島県)、仙台(宮城県)、盛岡(岩手県)、北利根(茨城県)など主な製造拠点の操業を停止。15日以降すべての出荷業務を見合わせている。

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日本からの出荷が再開しても新たな問題が待ち受けている。原発事故で部品や完成品が放射能に汚染されている可能性があるためで、物流・調達の経済団体BMEはすでに注意を促している。工作機械大手の森精機はこうした懸念を踏まえ、出荷前に放射能検査を実施する。

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特需が舞い込む企業も

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ミュンヘン再保険などのドイツの再保険大手はこれまでのところ東日本大震災に関する保険金支払額の見通しを発表していない。ただ、保険業界全体で120億~250億ドルの損失が予想されており、大きな痛手を受けるのは確実だ。元請大手ではアリアンツが地震・津波の被害よりも企業の生産・営業停止に伴う保険金負担の方が重いとの見方を示している。

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日本からの衝撃的な報道を受け、欧州経済研究センター(ZEW)のアナリスト・機関投資家景況感期待指数は前月の15.7から14.1へと悪化した。ただ、エコノミストはこうした反応を一時的な現象とみている。フランクフルト大学のコルネリア・シュトルツ教授(日本経済)はSZ紙に対し、ドイツの輸出に占める日本の割合は1%に過ぎないと指摘。震災の影響を受けるのは高級車など一部の業界に限られるとの見方を示した。

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ドイツ企業のなかには震災の特需が舞い込んでいるところもある。『ハンデルスブラット』紙によると、放射能汚染治療薬メーカーのHeylは日本政府の要請で震災後2度も出荷を行った。アジア・太平洋諸国からも問い合わせがあるという。同社の製品「Thallii-Heyl」には放射性物質セシウムを体外に排出し、体内被曝を緩和する作用がある。

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