リチウムイオン電池の性能を大幅に引き上げる新たな技術をカールスルーエ工科大学ナノテク研究所(INT)のマクシミリアン・フィヒトナー博士を中心とする研究チームが開発した。有機金属化合物とフッ化リチウムの混合物を熱分解して生成したカーボンナノチューブを電極(正極)として使用することで、従来のリチウムイオン電池に比べ容量を2倍に拡大した。
\電池のエネルギー密度を向上させることは電気自動車を本格普及させるうえで大きな課題となっている。INTによると、電気自動車に搭載されているバッテリーのエネルギー密度は同じ容積のガソリンに比べて(走行に実際に使用するエネルギーベースで)50分の1程度に過ぎない。航続距離を伸ばすには大量のバッテリーを搭載せねばならず、軽量化が課題となっている。
\電極の一方にカーボンナノチューブを使用すると、リチウムイオン電池の電力量を大幅に増大できることは最近の研究で明らかになっており、世界の研究機関は新たな電極材開発に向けた競争を繰り広げている。
\INTの研究チームが開発した手法は、有機金属化合物であるフェロセン(C10H10F)とフッ化リチウム(LiF)を混合して700度のアルゴン雰囲気中で熱分解するというもの。これにより多孔質のカーボンナノチューブ、鉄とセメンタイトのナノ分子が包み込まれた玉ねぎ型黒鉛状粒子、およびカーボンマトリクスに分散したLiFから構成される新たな電極複合素材を作る。INTによると、製法は比較的シンプルで、製造コストが低い。
\今回の研究では電力量は2倍に拡大したが、さらに改良を加えることで5倍にまで引き上げられるという。
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