人員削減や会社清算に伴い被用者に生じる経済的な痛手を緩和するために、雇用主は事業所委員会(従業員の社内代表機関)と協議して社会的計画(Sozialplan)という名の整理協定を締結する。これについては先週号でお伝えした。
\雇用主と事業所委が合意に達しない場合は、調停所(Einigungsstelle)が裁定を下す。調停所はその際、整理される社員の経済的な利害とともに、企業の財務力も勘案しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)112条5項に明記されたルールである。では、こうした企業に資産がないもののその親会社には資産がある場合、調停所は親会社に整理費用の負担を要求できるのだろうか。ここではこの問題を最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が3月15日に下した判決(訴訟番号: 1 ABR 97/09)に即してお伝えする。
\医療機関のK社は2006年1月、傘下のリハビリテーション病院計6カ所を6つの子会社に改編した。そのうち5カ所については敷地を以前から所有、残りの1カ所(改編後はO社)については敷地を借り受けてきた。
\O社は経営状況が悪く、同年末に会社清算を決定。これに伴い事業所委と社会的計画の策定に向け協議したものの、合意できず、調停所に裁定を委ねた。
\O社は約300万ユーロの債務超過に陥っていたが、調停所は親会社のK社が社会的計画の費用を負担すべきだとの立場から、総額130万ユーロの社会的計画を決定した。O社はこれを不服として裁判を起こした。
\連邦労裁はこの係争で、原告O社の訴えを認める判決を下した。判決理由で裁判官は、事業再編に伴い親会社が子会社の事業運営に必要な資産を自らの資産とした場合、親会社には子会社の社員の整理費用(社会的計画に伴うコスト)を負担する義務があるとした再編法(UmwG)134条の規定を指摘。そのうえで、O社の敷地(事業運営に必要な資産)はもともと借り受けていたもので、K社は組織再編に際してO社の資産を取り上げておらず、UmwGの規定に基づいてO社の社員の整理費用を負担する義務はないとの判断を示した。
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