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2011/3/30

総合 - ドイツ経済ニュース

緑の党初の州首相誕生へ、福島原発事故が大きく影響

この記事の要約

西南ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク(BW)とラインラント・ファルツ(RLP)の2州で27日、州議会選挙が行われ、即日開票の結果、環境政党・緑の党が両州でともに地滑り勝利を収めた。福島原発事故を受け原発の早期廃止を求め […]

西南ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク(BW)とラインラント・ファルツ(RLP)の2州で27日、州議会選挙が行われ、即日開票の結果、環境政党・緑の党が両州でともに地滑り勝利を収めた。福島原発事故を受け原発の早期廃止を求める世論が急速に高まったことが追い風となった格好。BW州では緑の党の州首相が全国で初めて誕生する見通しだ。今回の選挙結果を受け、州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)では与党の過半数割れが一段と進むことが確実となった。

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福島原発事故を受け、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)からなる中道右派のメルケル連邦政権は原発稼働期間の延長政策を凍結し、老朽化した原発7基の操業を一時停止した。だが、有権者の大多数はこの措置を目前に迫った選挙の対策に過ぎないと判断。一方、緑の党は1980年の結党以来、原発廃止を掲げており、有権者の支持が急速に高まった。

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同党はBW州の得票率で前回(11.7%)の2倍強の24.2%を獲得し、中道左派の大政党・社会民主党(SPD)を抜いて2位に躍り出た。RLP州では前回の4.6%から3倍強の15.4%へと拡大し議会への再進出を果たしている。両州では今後、緑の党とSPDが連立政権を樹立する見通しだ。

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BW州は保守的な土地柄で、CDUはこれまで58年間にわたって政権を維持してきた。このためドイツ初の緑の党の州首相が同州で誕生するのは意外と受け止められているが、州内には環境都市で有名なフライブルクがあるなど市民の環境意識は高く、緑の党が躍進する素地はあった。

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RLP州ではSPDのクルト・ベック州首相が16年にわたって首相を務め求心力が低下していた。このため同党は得票率が前回の45.6%から35.7%へと9.9ポイントも低下。議会で単独過半数を失ったため、緑の党との連立に切り替える。

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原発廃止の前倒し、選挙で国民的合意に

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今回の選挙では特にFDPの凋落が目立った。BW州では議席数が半減。RLP州では議席獲得に必要な得票率(5%)を割り込んだ。同党は3月20日のザクセン・アンハルト州でも全議席を失っており、党内には政策方針と党役員人事の刷新を求める声が強くなっている。

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FDPは2009年秋の連邦議会(下院)選挙で得票率を4.8ポイント増の14.6%へと伸ばし、与党入りを果たした。背景には保守派のCDU/CSUと革新政党のSPDからなる大連立政権が2期連続で続くことを懸念する有権者の懸念があり、FDPは政府に新たな方向性をもたらすことを期待されていた。だが、同党は財政難で現実味の薄い大幅減税方針などをかたくなに押し通そうして与党内に混乱を招来。経済界の利益を優先しているというメディア報道の影響もあり、支持率が急速に低下した。州議選での連敗はこうした傾向に歯止めがかかっていないことを意味し、ヴェスターヴェレ党首(外相)の責任問題にも発展しそうだ。

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緑の党が選挙に大勝したことで、原発廃止の前倒しは事実上、国民的な合意となった。メルケル首相は選挙後の演説で、「(福島の原発事故で)私の見方は変わった」と改めて強調。原発稼働延長を積極的に推進してきたFDPの役員は福島事故を受けて運転を停止した国内の老朽7原発を廃炉とする考えを表明した。老朽原発の残存発電量を新型原発に移転することもないとしている。

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