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2011/4/6

ゲシェフトフューラーの豆知識

被用者の賠償責任、重過失でも全額負担にならないケースあり

この記事の要約

業務の遂行に当たって雇用主に損害をもたらした場合、軽過失は除き被用者は賠償責任を負う。これは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が下した判決で基準が定められており、中度の過失の場合は通常、労使が痛みを分け合い、重過失の場合は […]

業務の遂行に当たって雇用主に損害をもたらした場合、軽過失は除き被用者は賠償責任を負う。これは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が下した判決で基準が定められており、中度の過失の場合は通常、労使が痛みを分け合い、重過失の場合は原則として被用者が全額を負担する。ただ、賠償額の確定に当たっては様々な要因を勘案しなければならず、重過失の場合でも被用者が全額負担を免れるケースがある。ここではこの問題をBAGが昨年10月に下した判決(訴訟番号:8 AZR 418/09)に即してお伝えする。

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裁判は病院経営者がMRI検査装置をうっかり壊した清掃員を相手取って起こしたもの。同清掃員は休診日の2006年1月8日(日)、診察室内から警報音が聞こえたため、警報音を消すボタンを押そうとして、誤って「磁気停止」ボタンを押してしまった。MRI装置はこれにより故障。病院には修理費3万843ユーロ、MRI装置を使えないことによる損失1万8,390ユーロが発生した。病院経営者は清掃員に重過失があったとして、損害額の全額賠償を求め提訴した。

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これに対し第1審の裁判所は被告清掃員に6カ月分の給与に当たる1,920ユーロを支払うよう命令。第2審はその2倍に当たる3,840ユーロの支払いを命じた。

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BAGは原告の上告を受けて審理を実施。第2審を支持する判断を示した。裁判官は被告が重過失を犯したことを認めつつも、原告の損害賠償請求額は被告の経済的な負担能力を著しく上回っていると指摘。給与の1年分に相当する額の賠償支払いを命じた第2審判決は法的にみて誤りがないとの認識を示した。

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