ドイツ内外の有力経済研究所は7日、連邦政府に提出した『2011年春季合同経済予測』のなかで今年の国内総生産(GDP)成長率を昨年秋に提示した実質2.0%から同2.8%へと大幅に上方修正した。世界経済は減速するものの、景気のけん引車が外需から内需へと移行。ドイツ経済は昨年に引き続き好調を維持する見通しだ。
\世界各国は金融危機が深刻化した2008年秋以降、大規模な景気対策を実施。財政出動を拡大したほか、金利も引き下げた。その効果で景気は大きく持ち直し、新興諸国では過熱の様相も帯びてきた。このためこれらの国では金融引き締めが始まっており、合同予測によると、世界の実質GDP成長率は昨年の4.0%から今年は3.4%へと低下。来年も3.3%にとどまる。
\ドイツ経済は昨年、外需を中心に景気が回復し、GDP成長率は統一後最高の3.6%に達した。今年も輸出の拡大が続いているものの、輸入が加速しているため外需(輸出-輸入)は減速。景気の主な原動力は内需へと移る。
\内需は個人消費と低金利が押し上げ要因となる。個人消費が拡大するのは雇用の改善が進み、所得も上昇基調にあるためで、失業者数は今年、19年ぶりに300万人を下回る見通しだ。合同予測は288万8,000人との見方を示している。低金利は住宅需要と企業投資を刺激する。
\個人消費の拡大と低金利は原料価格の高騰とあいまって物価を押し上げている。消費者物価の上昇率は2月以降、前年同月比で2.1%に達し、欧州中央銀行(ECB)が警戒水準とする2%を2カ月連続で超えた。予測によると、今年の平均インフレ率は2.4%に達する見通しだ。
\ユーロ加盟国はドイツなどで景気が好調なものの、ポルトガルやギリシャなど財政破綻の危機に直面する国では大幅なマイナス成長が予想され、ECBの利上げ余地は限られている。予測は「(低金利の継続により)ドイツの物価の安定性が損なわれ出している」と指摘する。
\ドイツの財政赤字は大幅な改善が予想される。好景気で税収が増えるうえ、経済危機で棚上げにされていた財政再建が今年から再開されたためで、予測は財政赤字の対GDP比率が昨年の3.3%から今年は1.7%、来年は0.9%に低下する予想。政府に対しては財政規律を今後も緩めないよう強く促した。
\景気のリスク要因としては一部ユーロ加盟国の財政危機と原料価格の高騰を挙げた。原料の値上げり自体は世界の好景気を反映するもので問題はないが、中東・北アフリカ情勢が過度に不安定化すると、世界経済に大きな悪影響が及びかねないとしている。
\予測は日本の震災と原発事故にも言及。世界の他の国の景気が一時的に冷え込む可能性はあるものの、深刻な影響はないとの見方を示した。発電能力の復旧と生産再開には数カ月を要すると予想している。
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