ドイツの造船業界が洋上風力発電の需要拡大に期待をかけている。独造船・海洋技術連盟(VSM)のヴェルナー・ルント会長は『南ドイツ新聞』とのインタビューで、「風力エネルギー業界からの受注は我々にとって大きな希望だ」と発言。2050年までに国内電力需要の25%を洋上風力発電で賄うという政府目標と、福島原発事故で高まった脱原発の機運が追い風となり、オフショア風力発電プロジェクト用の支援船・作業船の受注が拡大するとの見方を示した。
\VSMによると、独造船所の2010年売上高は前年の26億ユーロから47億ユーロへと増加し、金融・経済危機発生以前(08年)の水準を取り戻した。引き渡し数は49隻と08年(89隻)より少なかったが、1隻当たり価格が極めて高い特殊船や豪華客船が全体の半数(24隻)を占めたことで相殺された格好だ。
\売上高は08年水準まで回復したものの、銀行の融資抑制による資金難など業界を取り巻く環境は依然として厳しい。このためVSMのルント会長は、「オフショア支援船は収益性が非常に高く、有望な市場だ」と述べ、期待を示した。
\ただ、ドイツ製の洋上風力発電関連船舶は少なく、2010年に引き渡しが行われたのは小型船1隻にとどまった。ルント会長はこれについて、「ドイツの造船所に技術がないためではなく、国外の競合に受注が流れているため」と指摘。独建設大手Hochtiefがポーランドの造船会社に洋上特殊作業船を発注するなど、「我々は分かっているだけでも4件の受注を国外メーカーにさらわれた」と説明した。競争力を維持するには政府の融資支援継続・拡大が必要だとしている。
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