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2011/4/13

経済産業情報

自動車エアコン用新冷媒の採用進まず、有害物質発生の懸念で

この記事の要約

カーエアコン用冷媒として今年から導入が決まった「R1234YF」の使用にドイツの自動車メーカーが強い難色を示している。R1234YFは従来の冷媒に比べ温暖化効果が低い一方で微燃性があり、万が一引火すると毒物のフッ化水素が […]

カーエアコン用冷媒として今年から導入が決まった「R1234YF」の使用にドイツの自動車メーカーが強い難色を示している。R1234YFは従来の冷媒に比べ温暖化効果が低い一方で微燃性があり、万が一引火すると毒物のフッ化水素が発生する恐れがあるためだ。独自動車市場調査会社HIS Automotiveによると、新モデルに新冷媒採用のカーエアコンを搭載したドイツメーカーは1社もないという。8日付『フランクフルター・アルゲマイネ』が報じた。

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欧州連合(EU)では今年から、域内で販売する新型車を対象に地球温暖化係数(GWP)150以下の冷媒をカーエアコンに使用することが義務づけられた。2017年以降は全ての新車にこの基準が適用される。ドイツ自動車メーカーはこれを受けて、米国のハネウェルとデュポンが共同開発したR1234YF(分子構造:CF3-CF=CH2)の採用を決めた。

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だが、同冷媒は従来の不燃性冷媒と異なり、わずかながら燃焼性がある。このため、衝突事故などで車両に過大な衝撃が加わり多量の冷媒が漏れて引火すると、フッ化水素(HF)ないしフッ化水素酸(フッ化水素の水溶液)が発生する。

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フッ化水素は毒薬で、体重1キログラム当たり20ミリグラム以上を経口摂取すると死亡する。また、腐食性があり、皮膚に接触すると体内に容易に浸透する。体内ではカルシウムイオンと結合してフッ化カルシウムに変化。骨が侵されるとともに、フッ化カルシウム結晶の刺激で痛みを引き起こす。

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R1234YFを開発したハネウェルとデュポンは安全性を強調する。一方、ドイツ環境支援協会(DUH)と連邦材料試験局(BAM)は引火による危険性を指摘する。自動車メーカーもカーエアコン冷媒にR1234YFを使用していることが広く知られ顧客が購入を見合わせることを恐れており、ダイムラーは「今年秋以降に採用見通し」とコメントするにとどめる。フォルクスワーゲン(VW)は「採用の時期の検討も行っていない」。

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