欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2011/4/13

経済産業情報

薬品容器向け多機能バリア膜を開発

この記事の要約

薬品・危険物保存用のポリタンクのバリア性を飛躍的に高める薄膜積層体を、フラウンホーファー界面工学・バイオテクノロジー研究所(IGB)を中心とするプロジェクトチームが開発した。バリア層と柔軟性のある中間層を交互にはさみ込む […]

薬品・危険物保存用のポリタンクのバリア性を飛躍的に高める薄膜積層体を、フラウンホーファー界面工学・バイオテクノロジー研究所(IGB)を中心とするプロジェクトチームが開発した。バリア層と柔軟性のある中間層を交互にはさみ込む構造をとっているのが特徴で、薬品の注入・注出により容器が変形しても膜が破損しない(耐屈曲性)。また、膜の最外部に非粘着性の層が積層されるため、粘度の高い溶剤がほぼ残らず注出される。

\

薬品や危険物、揮発性の有機化合物などを保存する容器は、内容物の酸化・腐敗を防止する酸素バリア性、内容物からの水分の揮散・吸湿を防止する水蒸気バリア性が必要だ。これ以外に強酸・強アルカリに対する耐性(耐薬品性)、揮発性の高い薬品が空気中に漏れださないための気密性、塗料や接着剤、有機溶剤など粘度の高い流体が容器内に残らないための非粘着性も求められる。

\

バリア性の高い材質としてはガラスがあるが、重くて割れやすいため輸送に手間やコストがかかる難点がある。また、軽量で持ち運びが簡単な樹脂タンクは、水や酸素を通すため薬品保存容器としては問題がある。これらを解決するためにすでに多くのバリア膜が開発されているものの、上に挙げたすべての要件を満たすバリア膜はこれまでなかったという。

\

IGB、ガラス大手Schott、Plasma Electronicなどのプロジェクトチームはこの課題の解決に向け、あらゆる薬品の保存に向く多機能バリア膜の開発に着手。試行錯誤の末、必要なバリア機能を持つ無機層と、これを保護し柔軟性を与える中間層を交互に積み重ねて製膜する方法に行きついた。バリア膜は容器の内側にプラズマコーティングで直接、製膜する。

\

PET容器を用いた試作品では、コーティング処理をしていないPET容器に比べ酸素・水蒸気バリア性が1,000倍に向上。エチレン・ビニルアルコール強重合樹脂(EVOH)と比較しても酸素バリア性は5倍、水蒸気バリア性は50倍に改善した。注出時の内容物の残留度は4分の1に低下したという。

\