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2011/4/20

経済産業情報

グラフェンデバイス実現に一歩近づく

この記事の要約

グラフェンを炭化珪素(SiC)基板上に成形する新たな技法を、エアランゲン・ニュルンベルク大学(FAU)のハイコ・ヴェーバー教授を中心とする研究チームが開発した。基板の結晶構造を制御して特定の部分にのみ導電性を持たせたのち […]

グラフェンを炭化珪素(SiC)基板上に成形する新たな技法を、エアランゲン・ニュルンベルク大学(FAU)のハイコ・ヴェーバー教授を中心とする研究チームが開発した。基板の結晶構造を制御して特定の部分にのみ導電性を持たせたのち、グラフェンをエピタキシャル成長させるというもので、従来のエピタキシャル法では不可能だったボトムコンタクト構造を実現した。チームは今回の研究がグラフェンデバイスの実現・設計に向けた一歩になると期待を寄せる。

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グラフェンは炭素原子が六角形の格子状に並んだ1原子の厚さの層。独自の電気的、光学的、機械的特性を持ち、電子輸送特性が極めて高い。また、電圧を加えるだけで電気的特性をコントロールできるため、シリコンやガリウムヒ素に代わる半導体・トランジスター素子として注目を集めている。

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グラフェンの成膜には大きく分けて機械的剥離法とエピタキシャル法の2つがある。機械的剥離はグラファイトをテープで剥がし基板上に転写するもので、大面積での成膜ができない難点があるものの、ゲート電極が半導体の下部に形成されるボトムコンタクト構造を作ることができる。

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エピタキシャル法はSiC基板を熱分解してSiを離脱させ、表面に残ったC原子の再配列でグラフェンを形成する方法。ウエハスケールでの安定した成膜が可能な一方、SiC基板上に直接形成されるため、ボトムコンタクト構造が作れない。グラフェンの表面・接触面構造研究ではボトムコンタクト構造のほうが観察を行いやすいため、FAUの研究チームは機械的剥離とエピタキシャルの両方の利点を兼ね備えた成膜技術に取り組んだ。

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同チームは今回、SiC基板に窒素を埋め込んで基板の結晶構造を操作し、一部が電極として機能するように制御。モデルの実験では6~300ケルビンの間で動作したという。

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研究結果は『Nature Materials』に掲載された。

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