高機能型デジタル電力メーター(スマートメーター)の設置を義務づける法律が施行されて1年あまりが経過したが、普及は遅々として進んでいないようだ。メーターの設置コストが高く経済的なメリットがないことが大きな理由。また、スマートメーターの認知度が低いことや、従来型メーターからの乗り換えを促すような「スマート家電」や「スマートアプリ」が市場に少ないことも足を引っ張っている。
\スマートメーターは、電力会社との双方向の通信機能や家庭内の電気機器の監視・制御機能を備えた高性能の電力メーター。IT技術を活用して電力需給を調整・自動化するスマートグリッドの実現に欠かせないデバイスだ。
\ドイツでは2010年1月、新改築する住宅を対象にスマートメーターの設置を義務づける法律が施行された。今年1月からはこれに加え、電力会社に対しスマートメーター向け変動料金体系を導入することが義務づけられた。ただ、「技術的に可能で、かつ過大な経済的負担とならない範囲内で」というただし書きがついているため、強制力に乏しいことが指摘されている。
\エネルギー・通信技術研究グループ(ENCT)によると、全国のエネルギー供給会社800のうち個人顧客向けにスマートメーターと変動料金制を提供しているのは現在50社で、法人顧客向けでは同10社にとどまる。
\スマートメーターの効果の1つは、消費電力が「見える化」されることで、消費者の省エネ・節電意識が高められることだ。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、見える化による節電効果は5~10%に達する。ただ、◇スマートメーター設置によるコスト増で節約分が相殺されてしまう◇スマートメーターとセット利用することでエネルギー効率が改善する家電やソフトがほとんど市場投入されていない――などの事情があるため、全国新エネルギー事業連合(BNE)の担当者は「個人消費者にとってスマートメーターを利用するメリットはない」と指摘する。
\スマートメーターの認知度の低さも普及を妨げる要因になっている。独情報通信業界連盟(Bitkom)がこのほど実施した調査によると、スマートメーターが何のことか「知っている」と回答したドイツ人は14%に過ぎなかった。独エネルギー水道産業連合会(BDEW)は、このままではスマートメーターの世帯普及率を2020年までに80%にするという欧州連合(EU)の目標達成は不可能だとして、政府と規制当局、電力業界が一致団結して普及に向けた対策を講じる必要があると訴えた。
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