光触媒である二酸化チタンの反応性が結晶構造によって異なる原因を、カールスルーエ工科大学のクリストフ・ヴェル教授を中心とする国際研究チームが突き止めた。反応性の高いアナターゼ型結晶と低いルチル型結晶を赤外線分光法で観察したところ、光励起電子が正孔(電子が抜け出た穴)と再結合して失活するまでの時間がアナターゼ型のほうで長いことを確認した。研究チームは今回の発見がより反応性の高い結晶構造の開発につながると期待を寄せる。
\二酸化チタン(TiO2)は太陽光(紫外線)が当たると活性化して強い酸化力を生じる光触媒で、環境汚染物質の除去や人工光合成(水の分解)などへの応用が期待されている。
\TiO2には3種類の結晶構造があり、このうちアナターゼ(鋭錐石)とルチル(金紅石)の2種類が工業的に用いられている。光触媒として使われるのは主にアナターゼで、ルチルに比べ反応性は10倍も高い。
\カールスルーエ工科大学機能表面研究所(IFG)、セント・アンドルーズ大(スコットランド)、ヘルムホルツ研究所などの研究者からなるチームは、この物理的メカニズムや反応性に差が出る理由の解明に着手した。従来の実験で使われているナノ分子では小さすぎて表面変化をうまくとらえられないため、ミリメートルサイズのバルク単結晶を生成。一酸化炭素がTiO2表面上で酸化されて二酸化炭素を生成する反応を用いて測定を行った。この結果、ルチル型では光励起でTiO2表面から飛び出した電子がすぐに正孔に戻ってしまうため反応性が低い一方、アナターゼ型では電子が戻るまでの時間が長いため、触媒反応性が高くなることを突き止めた。
\今回の研究成果は『Physical Review Letters』(106号)に掲載された。
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