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2011/9/14

総合 - ドイツ経済ニュース

ドイツ経済の減速鮮明に、研究機関は成長率予測引き下げ

この記事の要約

ドイツ経済の減速を示すデータが増えてきた。景気のけん引車である輸出は7月以降、増加幅が大きく縮小。輸入物価や卸売物価も上げ幅は低下傾向にある。Ifo企業景況感指数は7月から2カ月連続で悪化しており、主要研究機関は最近、国 […]

ドイツ経済の減速を示すデータが増えてきた。景気のけん引車である輸出は7月以降、増加幅が大きく縮小。輸入物価や卸売物価も上げ幅は低下傾向にある。Ifo企業景況感指数は7月から2カ月連続で悪化しており、主要研究機関は最近、国内総生産(GDP)予測を相次いで下方修正した。背景には景気循環に基づく世界経済の成長鈍化のほか、欧米の財政危機や信用不安に起因する先行き不透明感の強まりがあり、各国政府や欧州連合(EU)が有効な危機打開策を打ち出せるかどうかも今後の景気を左右する要因となりそうだ。

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ドイツの輸出成長率は2010年3月以降、前年同月比で2ケタ台の高成長が続いてきた。だが、今年6月に前月の20.1%から3.1%へと大幅に縮小。7月も4.4%にとどまった。中国などの新興国が景気の過熱対策で金融引き締めに動いていることなどが反映されたもようだ。

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世界経済の減速を受けて輸入物価の上昇率も7月は7.5%となり、ピーク時の昨年12月(同12.0%)に比べ大きく低下した。この傾向は今後も続く見通しで、川下の消費者物価の上昇率(インフレ率)は弱まると予想される。

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Ifo経済研究所が毎月作成するドイツ企業景況感指数は8月に前月比4.2ポイント減の108.7となり、大幅に落ち込んだ。今後6カ月の事業の見通しを示す期待指数は以前から低下傾向にあったものの、8月は現状判断を示す指数も2カ月連続で大きく悪化。Ifoのハンスヴェルナー・ジン所長は「ドイツ経済は世界経済の乱気流の影響を免れない」と述べ、景気に黄色信号が灯る可能性を示唆した。

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自動車部品大手のボッシュは13日、2011年の売上成長率予測を従来の「10%以上」から「約10%」に引き下げた。「景気の勢いは上半期にピークを過ぎた」と判断したためで、業績予測の下方修正は今後、他の企業にも広がりそうだ。

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リセッションの可能性も

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こうした動向を踏まえ、ハンブルク世界経済研究所(HWWI)は2011年の独GDP成長率を従来予測の3.5%から3.0%に下方修正、2012年については同2.2%から1.2%へと大きく引き下げた。

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キールの世界経済研究所(IfW)も同日発表した予測で2011年の独成長率予測を従来の3.6%から2.8%に下方修正した。ドイツ経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性を排除しておらず、2012年は0.8%の低成長にとどまるとしている。経済協力開発機構(OECD)は8日、今年第4四半期の独成長率が年率換算で1.4%の縮小に転じるとの見通しを発表した。エコノミストは通常、2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションと定義している。

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ドイツ経済の減速要因はすべて外需に起因するもので、内需については好調が続きそうだ。雇用の安定とインフレ率の低下および低金利を追い風に個人消費は拡大基調が続くと予想される。企業の投資意欲も衰えていない。

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ただエコノミストが描くこうしたシナリオは、欧米の財政危機や米経済が今以上に悪化しないことを前提としている。このため、危機が深刻化すると、下振れは避けられない。

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足元のユーロ危機に目を向けると、EUがこれまでに打ち出した対策は十分な効果を挙げておらず、銀行の資金繰り不安や株価の急落に歯止めがかからない状況だ。11日にはユーロの安定化に向けギリシャのデフォルトの可能性を排除すべきでないとするレスラー独経済相の発言が伝わり、市場の不安が一段と高まった。ドイツ株価指数は週明けの翌12日に2.3%安の5,072へと下落。一時は5,000を割り込み2009年7月以来の低水準まで落ち込んだ。

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同経済相の発言はギリシャの財政破綻を回避するというドイツ政府の方針に反するもので、閣僚経験の浅さからくる失態であるのは確かだ。だが、ユーロ危機をいつまでも解決できない無力感やいら立ちがなければそうした発言がなかったのもまた確かで、政治の停滞を図らずも浮き彫りにする格好となった。

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