解雇された被用者がそれまで控えてきた権利の請求を徹底的に行うというのは起こりやすいことだ。「これまで懸命に働いてきたのに解雇するとは何事だ」といった怒りと「もはや失うものは何もない」という開き直りの心情が湧いてくるからである。
\そうした際にしばしば請求するものの1つに未払いの残業代がある。ここではラインラント・ファルツ州労働裁判所が7月に下した判決(訴訟番号:7 Sa 622/10)に即してこの問題をお伝えする。
\裁判を起こしたのはバイオマス発電事業者で施設の保守管理業務を担当していた男性社員。労働契約では週労働時間を38.5時間とし、超過分については休暇に振り替えることが取り決められていた。
\同社は経営上の理由で原告社員を2009年10月末日付で整理解雇した。原告はこれを受け、採用された05年7月1日以降で休暇に振り替えられていない残業時間が計696.5日に上るとして、残業代1万5,218.17ユーロの支払いを要求。これが拒否されたため提訴した。
\第1審のコブレンツ労働裁判所は原告の訴えを棄却。第2審のラインラント・ファルツ州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、未払いとなっている残業手当の支給を裁判で請求する際は被用者サイドが残業の事実を証明しなければならないとした連邦労働裁判所(最高裁)の判例を指摘。原告は何月何日に何時間、残業したかを証明できなかったとして訴えを退けた。また、残業代を請求するには雇用主が残業を命令ないし承認、容認したか、業務の遂行に残業が欠かせなかったことを証明する義務もあると付け加えた。
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