ドイツでは育児休暇手当てが2007年1月に導入された。育児休暇を取得したパートナー(結婚していれば配偶者)に最大12か月間、国が手取り収入の67%(上限額:月1,800ユーロ)を支給するという制度で、両親が2人とも育児休暇を取る場合には、支給期間が計14カ月に延長される。
\14カ月間受給する場合、パートナーの1人は最大12カ月しか取得できず、もう1人は2カ月以上、取得しなければならない。これは育児手当・休暇法(BEEG)4条3項の第1文に明記されたルールである。この条文をめぐり連邦憲法裁判所(BVerfG)が8月に初判断(訴訟番号:1 BvL 15/11)を示したのでここで紹介する。
\裁判を起こしたのは2007年7月に体重960グラムの未熟児を出生した母親で、出産後12カ月の育休手当を取得した。この期間の終了後も集中的な介護が必要なため、本来は父親しか受給できない残り2カ月についても母親が代わりに受給することを行政当局に申請。申請に際しては父親よりも母親が面倒をみた方が子供の成育に好ましいとする医師の診断書も提出した。これが却下されたため提訴した。
\裁判では第2審のニーダーザクセン・ブレーメン州社会裁判所が、両親のどちらかが一人で14カ月分を受給することを認めないのは憲法(基本法)違反の疑いがあると判断。連邦憲法裁に意見書を送付して判断を仰いだ。
\具体的には結婚と家族は国家の特別な保護のもとに置かれるとした憲法6条1項と、育児は両親の自然権であり、最も重要な義務であるとした同条2項を指摘。これらの規定を根拠に両親にはパートナーのどちらが育児を担うかを決定する権利があるとして、BEEG4条3項第1文の規定はこの権利の侵害に当たるとの判断を示した。
\これに対し、連邦憲法裁の裁判官は、BEEGの目的は伝統的に育児を押し付けられてきた女性が労働市場で不利な立場に立たされている現状を改め、憲法3条2項で保障された男女平等を促進することにあると指摘。BEEG4条3項第1文の規定はこの目的の達成に適したものだとして、ニーダーザクセン・ブレーメン州社会裁の見解を退けた。同社会裁が提示した憲法6条1・2項の解釈については不適切だとしている。
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