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2011/10/5

総合 - ドイツ経済ニュース

EFSFへの融資保証拡大を両院が承認

この記事の要約

財政危機に陥ったユーロ加盟国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」の機能強化に向けたドイツの国内法案が9月30日までに両院で可決された。連邦議会(下院)では出席議員611人のうち52 […]

財政危機に陥ったユーロ加盟国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」の機能強化に向けたドイツの国内法案が9月30日までに両院で可決された。連邦議会(下院)では出席議員611人のうち523人が賛成。与党3党は造反議員の説得が奏功し、自力で過半数票を確保した。両院の議会審議ではEFSFの資金力を引き上げるために将来、レバレッジを活用することの是非が大きな議論となった。

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ユーロ圏17カ国は7月21日の首脳会議で、EFSFの機能を強化し危機に陥った国の国債を購入できるようにすることで合意した。また、対象国が危機的状況に陥る前に緊急融資を行えるようにするほか、EFSFの信用供与能力を引き上げるために加盟国の融資保証枠を従来の4,400億ユーロから7,800億ユーロへと拡大することも取り決めた。

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連邦議会と連邦参議院(上院)で可決されたのはこの合意に基づく国内法案で、ドイツの融資保証枠は従来の1,230億ユーロから2,110億ユーロへと引き上げられる。

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ただ、レバレッジを活用してEFSFの信用供与能力を大幅に強化するとの議論が数日前にEU当局などから出始めたことで、実際の保証枠が2,110億ユーロを大幅に上回る可能性が急浮上。議会審議ではこれが大きな問題となり、ショイブレ財務相は「レバレッジを用いてEFSFの信用供与能力をひそかに引き上げることは本法案ではあり得ない」と明言。火消しに努めた。将来的に活用する可能性については否定していない。

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レバレッジ(てこの作用)は少ない資金で大きな資金を動かす金融技術で、金融取引でしばしば利用される。

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EFSFでレバレッジの活用が議論されるのは、ギリシャのデフォルト(債務不履行)危機がイタリアやスペインなど経済規模の大きいユーロ加盟国にも広がると7月の首脳合意に基づく与信能力では対応しきれなくなるためだ。一方で、危機が深刻化する都度にドイツなどの資金提供国から融資保証の拡大を求め続けるのは難しく、レバレッジの活用はEFSFに残された唯一の選択肢となる可能性がある。(レバレッジ活用構想については図を参照)

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だが、レバレッジを活用したにもかかわらず支援対象国がデフォルトに陥った場合は、レバレッジで大幅に膨らんだ運用資金の損失をユーロ加盟国が穴埋めしなければならず、リスクの規模は本来の融資保証枠を大きく上回る。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が先ごろ、レバレッジ活用に道を開けばドイツの格付けを引き下げると警告したのはこのためだ。

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連邦議会の議決では与党票が過半数に達するかどうかも大きな焦点となっていた。過半数を割り込むとメルケル政権の信頼性が大きく傷つき、ドイツの政治そのものが混乱する恐れがあったためだ。格付け会社はそうした事態を見据え、ドイツの格付けに影響する可能性があると警告していた。

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