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2011/10/5

経済産業情報

ワサビの酵素が原子移動ラジカル重合の触媒に

この記事の要約

ポリマー重合反応の1つである原子移動ラジカル重合(ATRP)で、西洋ワサビに含まれるペルオキシダーゼという酵素が重合触媒として機能することをバーゼル大学のニコ・ブルーンス教授を中心とする研究チームが発見した。触媒として従 […]

ポリマー重合反応の1つである原子移動ラジカル重合(ATRP)で、西洋ワサビに含まれるペルオキシダーゼという酵素が重合触媒として機能することをバーゼル大学のニコ・ブルーンス教授を中心とする研究チームが発見した。触媒として従来使用されている遷移金属錯体に比べ扱いがはるかに簡単なうえ、有毒な副産物が作られないなど環境にも優しいことから、安全性の高い食品容器や医療用ポリマーの開発に弾みがつくとチームは期待を寄せる。

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ATRPは不対電子をもつ原子や分子(フリーラジカル)を反応の中心としてポリマー鎖が伸張していく反応で、リビングラジカル重合法の一つ。通常は遷移金属錯体の触媒とハロゲン化合物を重合開始剤として使用する。

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ATRPは◇高分子かつ分子量分布の狭いポリマーが得られる◇高度に制御された多種多様な配置や組成をもったポリマー合成が可能――といった利点がある一方、触媒に使用される遷移金属錯体(通常は銅錯体)と残留物の除去に手間がかかるという難点がある。このため、ありきたりの化合物で処理も簡単な有機分子を触媒として使用することに研究者の関心が集まっている。

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西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)はヘムタンパク質で、無置換ポリフェノールの合成触媒となることはすでに知られているが、ATRPの触媒としての機能はこれまで知られていなかった。バーゼル大の研究チームは、臭化アルキルを開始剤、HRPを触媒としてN-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)を合成することに成功した。作成されたポリマーの分散比(数字が1に近いほど分子量分布が狭いことを示す)は1.44で、ポリマー鎖の長さがかなり均一に制御されたこともあわせて確認された。

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研究の成果は『Macromolecular Rapid Communication』に掲載された。

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