欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2012/5/23

経済産業情報

新たなメタマテリアル作成に成功、ペンタモードで音波の操作が可能に

この記事の要約

安定した結晶格子を形成しながら液体のように変形・流動する新しいメタマテリアルの作成に、カールスルーエ工科大学(KIT)のマルティン・ヴェーゲナー教授を中心とする研究チームが成功した。新たな素材は「ペンタモード」と呼ばれる […]

安定した結晶格子を形成しながら液体のように変形・流動する新しいメタマテリアルの作成に、カールスルーエ工科大学(KIT)のマルティン・ヴェーゲナー教授を中心とする研究チームが成功した。新たな素材は「ペンタモード」と呼ばれる構造を持っており、理論的には1995年に予言されていたが、実験的に検証されたのは今回が初めて。

\

ペンタモードは曲げ剛性、ねじり剛性など5(古典ギリシャ語でペンタ)種類の剛性が全てゼロであるものの、体積弾性(縦弾性)だけは変化する物質。同じ機械的(力学的)性質を持つ典型的な物質としては水が挙げられる。固体のような結晶構造を持ちながら水のような機械的性質を持つため、「メタ流体(metafluid)」ともよばれる。

\

メタマテリアルは通常、光を含む電磁波に対し自然界にはない振る舞いをする人工材料のことを指し、対象物を見えないようにする“透明マント”を実現する素材として大きな注目を集めている。これに対しペンタモードは電磁波ではなく音波に対する操作が可能とされる。音波は波としての性質を持つため、反射、屈折、回折などの現象が起きるが、ペンタモードの素材を使えば、そこに存在するにもかかわらず、あたかも何も存在しない空間であるかのごとく音を伝搬させることが可能になるという。ただ、ペンタモードはこれまでに様々な構造が考案されてきたものの実際に作成されたことがなく、理論上の素材にとどまっていた。

\

KITの機能ナノ構造研究所(CFN)、応用物理研究所(AP)、ナノテクノロジー研究所(INT)の研究チームは、ダイレクトレーザーライティング法と呼ばれる手法で、高分子材料(ポリマー)を使ったペンタモードの作成に取り組んだ。試行錯誤の末、四面体の重心と先端を結ぶ線上に4本の針が配置された構造にたどり着いた。作成した試作品の機械的性質を測定したところ、理論通りの性質を備えていることが確認されたという。

\

研究成果は『Applied Physics Letters』に掲載された。

\