ドイツ企業が買収主体や対象として関与するM&A(合併・買収 )が依然として活発だ。市場調査会社M&A Internationalの調べによると、上半期の件数は前年同期とほぼ同じ654件に達し、高い水準を維持(グラフ参照)。同社のアクセル・ゴルニック社長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に対し「独企業関連のM&A市場は極めて明るく、欧州債務危機の影響を受けていない」と断言した。
\同M&Aのなかで最も大きく伸びたのは外国企業によるドイツ企業の買収で、件数は前年同期比13%増の196件に拡大した。ゴルニック社長は独企業の「質の高さ」が評価されているためと指摘する。外資は特に高い技術を持つ中堅企業に熱い視線を送っているようだ。
\今年上半期は中国建機大手の三一重工がコンクリートポンプの世界的な有力メーカーである独プツマイスターを買収し、注目を集めた。これまでは中国企業の買収対象となる独企業が経営難に陥った企業に限られていたのに対し、同ケースでは財務基盤の健全な独企業が買収されたためだ。三一重工は買収金額ベースのランキングでも8位に入り、中国企業で初めてトップ10入りを果たしている(表参照)。
\上半期はリーマンショックに伴う金融危機でなりを潜めていたプライベート・エクイティ(PE)系投資会社の活動が活発化してきたことも目を引いた。買収資金を銀行から再び借り入れられるようになってきたことが背景にあり、米PEのサーベラスは倒産した英不動産大手Speymill Deutsche Immobilien の独不動産子会社を12億3,500万ユーロで買収した。仏PEのChequers Capitalも独電動工具メーカーMetaboを第3者割当増資を引き受けて傘下に収めた。
\今後、取引が成立する見通しのPEによる買収も目白押しで、スウェーデンのEQTは独医療品メーカーBSN Medicalを18億ユーロ、米Melroseは測量機器メーカーの独Elsterを23億ドルでそれぞれ買収する予定だ。米KKRは独高級キッチン・ホテル用品メーカーWMFの過半数資本を英PEのCapvisから5億8,600万ユーロで譲り受ける。
\ \下半期は大型買収増える見通し
\ \ドイツ企業が関係する上半期のM&Aで規模が50億ユーロを超える巨大買収は1件もなかった。上半期に巨大買収がないのは3年連続という。
\そうしたなかで規模が最も大きかったのは独ソフト大手SAPによる米クラウドソリューション大手サクセスファクターズ の買収だ。買収価格は25億ユーロに上った。同社は5月にも米同業米同業アリバを33億8,000万ユーロで買収計画を発表しており、買収手続きは第3四半期にも終了する見通し。
\8月には自動車大手フォルクスワーゲン(VW)がポルシェAG株50.1%を44億6,000万ユーロで取得して完全子会社化する。VWはポルシェAGの純債務25億ユーロも引き受けるため、取引総額は50億ユーロを超える見通しだ。
\下半期にはこのほか、エネルギー大手エーオンによる天然ガス輸送網子会社Open Grid Europa売却(取引金額32億ユーロ)や、ティッセンクルップのステンレス子会社売却(同27億ユーロ)が予定されるなど、大型M&Aは増える見通しだ。
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