二酸化炭素(CO2)と水素(H2)からメタノール(CH3OH)を合成する触媒で、溶液中に溶けて働く「均一系」と呼ばれる遷移金属錯体触媒を、アーヘン工科大学(RWTH)ユルゲン・クランカーマイヤー教授を中心とする研究チームが初めて開発した。CO2をメタノールに変換する触媒ではこれまで、反応物と触媒の相が異なる不均一系触媒しか存在しなかったが、均一系触媒の道が開けたことでCO2の固定化・有効利用技術開発に弾みがつきそうだ。
\CO2からのメタノール製造では、CO2を水素添加反応によって段階的にメタノールに還元する。CO2は非常に安定した不活性の分子のため、活性化するためには触媒の助けが不可欠になる。また、触媒反応はいくつものステップを経る複雑な反応のため、触媒機能を向上させるには活性の高さのほか、特定の反応だけを触媒する機能(選択性)が高いことが求められる。
\CO2をメタノールに変換する触媒はすでに様々な種類が開発されているが、そのほとんどは反応液や反応ガスと接触させる不均一系(固体)触媒だ。不均一系触媒は◇分離、回収、再使用が容易◇連続使用が簡単――といったメリットがある一方、触媒の表面(あるいは界面)でしか反応が進まないため無駄が出る難点がある。
\これに対し、均一系触媒は触媒分子、反応物がともに溶液中に均一に溶け込んでおり、反応後の生成物との分離が難しいという弱点があるものの、分子の形で働くため無駄がなく、反応性を分子レベルで厳密に制御できる。
\RWTHのチームが新たに開発した触媒は、リン化水素(ホスフィン)の配位子を持つルテニウム(Ru)錯体。溶液中に溶かして反応器(オートクレーブ)に入れ、CO2 と水素混合雰囲気中で加圧すると、段階的にメタノールと水が生成される。従来の触媒では高温(約800度)処理を必要とするものが多かったが、新たな触媒は比較的低い温度で作用するという。
\研究成果は『Angewandte Chemie』に掲載された。
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