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2012/8/8

総合 - ドイツ経済ニュース

ドイツ経済に黄信号、輸出低迷が鮮明に

この記事の要約

ドイツ経済の減速が鮮明になってきた。欧州債務危機の深刻化と中国や米国の景気鈍化が響いている格好で、Ifo企業景況感指数は5月から3カ月連続で悪化。輸出成長率も勢いがなくなっている。業績が低迷・悪化する大手企業も少なくなく […]

ドイツ経済の減速が鮮明になってきた。欧州債務危機の深刻化と中国や米国の景気鈍化が響いている格好で、Ifo企業景況感指数は5月から3カ月連続で悪化。輸出成長率も勢いがなくなっている。業績が低迷・悪化する大手企業も少なくなく、経済界には警戒感が広がりだしてきた。

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ドイツ経済は2011年と12年の国内総生産(GDP)成長率が実質3%を超えるなど、これまで欧州債務危機の影響をほとんど受けてこなかった。企業が中国など新興国での事業を通して業績を拡大してきたためで、経済界には楽観ムードが蔓延していた。

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だが、ギリシャのユーロ離脱懸念や大国スペインの財政支援要請を受けて状況は一転。Ifo企業景況感指数は5月に3ポイントも低下し、7カ月ぶりに悪化した。

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同指数の下落はその後も止まらず、7月には103.3まで落ち込んだ。3カ月間の下落幅は計6.6ポイントに上っており、金融大手INGのエコノミストは『ヴェルト』紙に対し「ユーロ危機に対する(ドイツ経済の)免疫は切れた」との見方を示した。

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景気のハードデータからもドイツ経済の減速は見てとれる。連邦統計局の貿易統計によると、輸出成長率は3月以降、0~3%台の低水準で推移。10~20%台の高成長が続いた昨年上半期を大きく下回っている(下のグラフを参照)。

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企業の受注にも陰りが出ている。連邦経済省が7日発表した6月の製造業受注指数は物価・営業日数・季節要因を加味した実質で前月を1.7%下回り、昨年11月以来の大幅下落となった。製造業受注は4月にも減少しており、第2四半期は3カ月中2カ月で前月を割り込んだ格好だ。

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景気の先行き不透明感が強まると企業は投資を見合わせる。ハレ経済研究所(IWH)のエコノミストは、欧州債務危機の深刻化は投資需要先送りの形でドイツ経済の足かせになると予想している。

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BASFはアジアで減収に

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景気の減速は大手各社が公表した最新の決算報告にも反映されている。特に素材、半導体など景気変動の影響を受けやすい企業でその傾向は強い。化学大手BASFはエネルギーと農業科学事業が好調だったため増益を確保したものの、化学品や樹脂は大幅な減益となった。これまで成長を支えてきたアジアで需要が低迷しており、同地域の売り上げは現地通貨ベースで1%落ち込んだ。ボック社長は「アジア事業がいつ回復するのか、現時点では分からない」と明言した。ここ数カ月で、事業・景気の見通しが急速に悪化したとしている。

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樹脂大手ランクセスも下半期の営業利益が前年同期(4億8,500万ユーロ)と同水準にとどまると予想している。ユーロ経済の先行き不透明感を受け川下企業が発注を抑制しているためだ。

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半導体大手インフィニオンは事業の低迷が続くとして、投資を見合わせる意向を表明した。商用車大手のMANは需要減が響いて上半期の営業利益が38%減少。ブラジルと欧州で減産に踏み切る。

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鉄鋼大手ティッセン・クルップは今月から操短を開始した。少なくとも年内いっぱいは続ける見通しだ。

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重電大手のシーメンスでも4-6月期の新規受注が23%減と大幅に落ち込んだ。これまで急速に拡大してきた中国のインフラ需要が鈍っており、経営陣は同国事業の弱含みが年内は続くとみている。

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