雇用主は時に、被用者から提訴される。そうした際に原告社員の業務用パソコン(PC)に記録された私的なデータを閲覧して、裁判証拠として利用することはできるのだろうか。この問題に関する係争でハム州労働裁判所が7月に判決(訴訟番号:14 Sa 1711/10)を下したので、ここで取り上げてみる。
\裁判は業務上横領を理由に被告企業から解雇通告を受けた社員が起こしたもの。雇用主は解雇通告後、原告社員の業務用パソコン内に同横領を裏付けるチャットデータを見つけたため、裁判証拠としての採用を申請した。これに対し原告は、プライバシーを侵害する違法な手段で手に入れた証拠は裁判で利用できない(違法収集証拠排除法則)と主張し、採用しないよう裁判官に訴えた。
\第2審のハム州労裁はこの問題で、原告の訴えを退けた。判決理由で裁判官は、被告企業が(1)インターネットなどをときどき私的に利用することを社員に認めていた(2)パソコンの利用状況を監視し必要があればデータも閲覧することを社員に周知していた――事実を指摘。こうした前提があれば、社員の違法行為に関する裁判でパソコン内の私的データを利用できるとの判断を示した。
\最高裁への上告を認めている。
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