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2012/8/22

総合 - ドイツ経済ニュース

政府が暖房買い替え補助金などの導入検討

この記事の要約

原子力発電の廃止を前倒しするとともに再生可能エネルギーの利用拡大と大幅な省エネを目指す「エネルギー転換政策」の実現に向け、政府が法令を少なくとも2つ準備していることが、最近のメディア報道で明らかになった。1つは洋上風力発 […]

原子力発電の廃止を前倒しするとともに再生可能エネルギーの利用拡大と大幅な省エネを目指す「エネルギー転換政策」の実現に向け、政府が法令を少なくとも2つ準備していることが、最近のメディア報道で明らかになった。1つは洋上風力発電パークで生産された電力を送電できなかった場合の補償問題に関する政令案、もう1つは旧式の暖房をエネルギー効率の高い暖房に買い替えた住宅所有者に補助金を支給することを柱とする法原案。ともにエネルギー転換政策を推進するうえで大きな役割を果たす可能性があるものの、政策に伴うコスト負担は最終的に消費者や企業が負担するため、議論を呼びそうだ。

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北海・バルト海の洋上風力発電パークで生産された電力は海底の高圧送電線を通して陸地へと輸送される。これらの海底送電線は送電網事業者が敷設を義務づけられている。

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だが、電力を送電できず発電事業者が損失を被った場合の補償問題が法的に明確でないため、送電網事業者は敷設資金を確保できない問題に直面。監督機関の連邦ネットワーク庁(BNetzA)は北海に建設予定の風力発電パーク「Deutsche Bucht」を運営するWindreichの苦情を受け、このほど高圧送電網運営会社Tennetに対する調査を開始した。Windreichは「Tennetは高圧網運営者としての責務を果たしていない」と訴えている。

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政府は補償問題を明確化することで送電網の敷設事業に民間投資家の資金を呼び込む考え。15日付『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が連邦経済省作成の法令案をもとに報じたところによると、政府は送電が途絶えた際に送電網事業者が発電事業者に補償しなければならないケースを故意と重過失の場合に限定。重過失の場合は送電網事業者の補償負担額を損失全体の20%にとどめ、残りは川下の利用者に転嫁できるようにする。また、発電事業者が補償請求できる額を損失の90%に制限したうえで、請求できるケースについても送電網を(1)9日間連続で利用できなかった(2)1年間に計18日以上利用できなかった――のどちらかの要件を満たした場合に限定する。

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旧式の暖房を新しい暖房に買い替えた住宅所有者に補助金を支給する法原案は日刊紙『ビルト』が17日に報じ、ペーター・アルトマイヤー連邦環境相がその日のうちに追認した。

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同紙によると、助成対象となるのは石油暖房とガス暖房。補助金の額は未定。財源は暖房油と天然ガスの取引事業者への課税で確保するため、最終的に需要家に転嫁されることになる。

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アルトマイヤー環境相は同買い替え補助金の導入に向けて現在、関連省庁間で法案調整を進めていることを明らかにした。ただ、同法案が閣議決定されるかどうかは定かでなく、助成ルールも決まっていないとしている。

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ドイツではリーマンショックに伴う金融・経済危機への時限措置として、2009年に新車買い替え補助金が導入され、大きな景気底上げ効果を発揮した経緯がある。政府は今回はエネルギー転換政策の一環として暖房向けの補助金導入を検討し、大幅な省エネを実現する考えだ。

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再生電力助成ルールに違憲訴訟

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ドイツでは再生可能エネルギー電力の買い取りに伴う需要家の負担額が今後膨らみ続ける見通しで、大きな問題となっている。同負担は消費電力1キロワット時当たり現在3.59セント。来年初頭からはこれが5.3セントに上昇する公算が高く、年間消費量3,500キロワット時の標準世帯では年負担額が現在の125ユーロから185ユーロへと跳ね上がる。

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海底送電網の補償政令案と暖房買い替え補助金が実施されると、企業と消費者の負担額は一段と増えることになる。

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再生電力の助成金負担については、同負担の特免措置を受けられない繊維メーカー3社が、特免措置をエネルギー集約型企業に制限した現行ルールを不当としてこのほど、違憲訴訟を起こした。消費者保護団体も消費者の負担軽減を求めており、需要家の間では負担増への不満が高まっている。

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