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2012/8/29

総合 - ドイツ経済ニュース

独中合同閣議を北京で開催、知財権・貿易摩擦など課題は山積み

この記事の要約

ドイツのメルケル首相は30、31日の両日、中国を訪問する。両国の合同閣議を北京で実施。ドイツからは閣僚のほか財界人が多数随行し、中国サイドと契約を締結するもようだ。両国の協議では欧州債務危機が最大のテーマとなる見通しだが […]

ドイツのメルケル首相は30、31日の両日、中国を訪問する。両国の合同閣議を北京で実施。ドイツからは閣僚のほか財界人が多数随行し、中国サイドと契約を締結するもようだ。両国の協議では欧州債務危機が最大のテーマとなる見通しだが、知財権や貿易摩擦問題も議題に上るとみられる。

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ドイツと中国は2010年のメルケル首相訪中に際し、戦略的パートナーシップの強化に向けて年に1度、首脳・閣僚レベルで様々な問題を話し合うことで合意。昨年6月に両国初の合同閣議をベルリンで開催した。

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ドイツは戦略的に重要な国との間で合同閣議を開催しており、これまでにフランス、イスラエル、ポーランド、ロシア、インドなど7カ国と実施した。一方、中国はドイツ以外の国と合同閣議を一切行っていない。

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同国は米国をけん制するために欧州連合(EU)との関係を重視しており、EUの政治経済で最大の影響力を持つドイツとの関係を特に強化する意向だ。

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両国の経済関係は中国の成長に歩調を合わせて急速に拡大している。独経済省によると、独中の貿易総額は昨年1,440億ユーロとなり、2001年比で430%拡大した。中国はドイツの5番目に大きな輸出先国で、輸入額では2位に付ける。

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中国からドイツへの直接投資は10億ユーロ未満(11年)で、ドイツの対中直接投資270億ユーロ(10年)を大きく下回るものの、今年に入って急速に活発化しており、建機大手の三一重工はコンクリートポンプの世界的な有力企業プツマイスターを3億2,400万ユーロで買収した。メディア報道によると、武漢鉄鋼(Wisco)はティッセン・クルップの自動車鋼板子会社Tailored Blanksを買収する方向で交渉している。また、山東重工はフォークリフト大手キオンに最大7億ユーロを投じ、資本25%を確保する方向という。

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ドイツには投資会社が保有する有力メーカーが多いという事情もあり、今後は中国企業に買収されるケースが増えそうだ。

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建設業界もダンピングを懸念

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今回の合同閣議にはドイツからショイブレ財務相、レスラー経済相、ラムザウアー交通・建設相、シャヴァン教育・研究相、アルトマイヤー環境相など7閣僚が随行する。ユーロ危機や経済問題が重要なテーマとなることはこの顔ぶれから予想がつく。

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中国企業による知財権の侵害はドイツ企業にとって最も頭の痛い問題の1つで、メルケル首相は就任当初から中国政府に改善を求めてきた。同首相は前回の訪中で、中国に進出する外資系企業に技術的なノウハウを現地の提携先企業に移転することを強要する技術移転政策を取り上げ「中国企業も自らの知財権をドイツでオープンにしたくはないでしょう」と発言。同政策の不公平さを辛辣に批判した。

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だが、中国サイドの対応は一向に進んでいない。メディア報道によると、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の現地提携先企業・第一汽車集団(FAW)はVWのエンジンとギアボックスの技術情報をひそかに入手・盗用してきたもようだ。中国に進出する企業はこうした事情を踏まえ、重要部品を現地生産しないなどの対策を余儀なくされている。

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貿易摩擦問題では最近、EUの太陽電池メーカー25社が中国製太陽電池に対し反ダンピング措置を講じることを欧州委員会に申請。中国企業4社はこれに対抗する形で、EUの多結晶シリコンメーカーは不当に安い価格で製品を中国に輸出しているとして中国商務省に調査を申請した。メルケル首相やアルトマイヤー環境相はこの問題について中国首脳と協議する予定。

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中国企業のダンピングについてはドイツの建設業界も警戒心を強めている。中国の建設大手が欧州の公共事業に破格値で応札し落札するケースが増えている一方で、欧州の建設会社中国市場から事実上締め出されているためだ。独建設業全国連盟(HDB)のクニッパー専務理事は『ハンデルスブラット』紙に対し、中国の建設大手は国営銀行の低利融資と低い応札価格を武器にアフリカ市場を席巻したと指摘。中国勢の欧州市場シェアは現在小さいものの、その力を軽視してはならないと強調した。

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