ドイツの貿易に占める欧州連合(EU)域外の存在感が高まっている。欧州債務危機の影響でユーロ圏向けの輸出が低迷する一方で、EU以外の地域との取引は着実に増えているためだ。特に世界経済のけん引車である新興諸国は中国を中心に重要な貿易パートナー国となっている。
\連邦統計局が8月30日発表した2012年上半期の国・地域別貿易統計によると、ドイツの輸出高は5,505億ユーロで、前年同期を4.8%上回った。最重要市場のユーロ加盟国向けは1.2%減の2,116億ユーロに後退したものの、EU域外が11.1%増の2,314億ユーロへと大きく拡大。ユーロ圏向けの不振を十二分に相殺した。(表1を参照)
\EU加盟国では財政危機に直面する南欧諸国向けの輸出が特に振るわず、ポルトガル向けは14.3%減少。スペイン(同9.4%減)、ギリシャ(9.2%減)、イタリア(8.2%)向けも軒並み大きく落ち込んだ。
\そうしたなか、東欧のEU加盟国への輸出は堅調で、ブルガリア向けは20.7%増加。ラトビアとルーマニア向けもそれぞれ18.3%、8.7%拡大した。
\EU域外への輸出では日本向けが19.9%増加し3年連続で拡大。米国向けも18.6%の伸びを示した。ロシア向けは14.8%増。中国向けは8.6%増で、拡大幅は前年同期の25.2%から鈍ったものの、輸出額自体はフランス、米国、オランダ向けに次ぐ4位に付けている。
\輸出額に占めるEU域外の割合は増加傾向にあり、今年上半期は前年同期の39.7%から42.0%へと2.3ポイントも拡大した。08年上半期には同35.4%にとどまっていた。
\上半期の輸入高は4,571億ユーロで、2.4%の増加にとどまった。ユーロ圏からの輸入は1.4%増、ユーロ圏外からも同2.6%増と増加幅が小さい。ただ、一部の新興国からの輸入は大きく増えており、スロバキアは17.7%増、ロシアは16.2%増、ルーマニアは14.6%増と2ケタ台の伸びを記録した。
\ \BRICs向け輸出、10年で4倍に
\ \新興国との貿易は急速に拡大している。連邦統計局が29日発表したブラジル、ロシア、インド、中国の新興4カ国(BRICs)との貿易に関する統計によると、BRICs向けの輸出額は01年の計304億ユーロから11年には1,212億ユーロへと4.0倍に拡大。倍率は独輸出全体の1.7倍を大きく上回った(表2を参照)。倍率が最も大きいのは中国向けで5.4倍。これにインド(4.7倍)、ロシア(3.3倍)、ブラジル(2.0倍)が続く。輸入でも全体の額の倍率が2.6倍だったのに対し、BRICsは同6.4倍に達した。
\ドイツとBRICsの貿易品目をみると、ドイツからの輸出では機械と自動車・自動車部品の比率が高いことが分かる(表3を参照)。一方、BRICsからの輸入では資源や農産品、衣料品が目立つ。ロシアからの輸入はその4分の3が石油・天然ガスで、ブラジルも鉱石が28%、農産物が21%、食品・飼料が13%を占める。中国とインドについては衣料品の割合がそれぞれ11%、17%に上る。ただ、中国については輸入品に占めるコンピューター・電子機器の割合が34.9%と圧倒的に高く、他のBRICs諸国よりも工業化が進んでいることがうかがわれる。
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