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2012/9/5

総合 - ドイツ経済ニュース

「年金生活者の3人に1人が貧困層に」、労働省が警鐘

この記事の要約

年金をきちんと払い続けたにもかかわらず貧困に陥る高齢者の増加が懸念されている。連邦労働・社会省(以下:連邦労働省)の試算によると、フルタイム勤務で35年間年金を払い続けてきた月収2,500ユーロ(税・社会保険込)の被用者 […]

年金をきちんと払い続けたにもかかわらず貧困に陥る高齢者の増加が懸念されている。連邦労働・社会省(以下:連邦労働省)の試算によると、フルタイム勤務で35年間年金を払い続けてきた月収2,500ユーロ(税・社会保険込)の被用者が2030年以降に受け取る年金額は、最低限の暮らしに必要な生活費(月688ユーロ)に過ぎない。2010年のフルタイム労働者の36%は月収2,500ユーロ未満だったため、このままでは年金生活者の3人に1人が最低限の生活ができなくなる恐れがあるとして同省は警鐘を鳴らしている。試算報告書を入手した日曜紙『ビルト・アム・ゾンターク』が2日付で報じた。

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問題の背景にあるのは2003年の年金改革だ。公共放送ARDによると、同改革によって年金の給付水準が2030年までに現役世代の平均所得(社会保険控除後・税込み)の43%に引き下げられることが決まった(現行水準は51%)。

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連邦労働省の試算によると、年金支払い期間40年で最低限の生活費を受け取るためには月収2,200ユーロ以上が必要となる。子育てや家族の介護などの理由で、正規雇用に比べ賃金が低いパートやアルバイトとして就労することが多い女性や、飲食業、販売員など低賃金セクターで働く労働者は特に高齢時に貧困へと陥るリスクが高い。

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ウルズラ・フォンデアライエン連邦労働相は、こうした人たちは「公的年金以外の個人年金に加入していなければ年金生活の初日に生活保護申請に出向かねばならなくなる」と述べ、対策の必要性を強調。年金加入期間30年以上の被用者に対し追加年金を支給することなどを提案した。一方、連立与党の自由民主党(FDP)は、現役世代にこれ以上の負担を強いることはできないとして、同労相を批判した。

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