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2012/9/19

ゲシェフトフューラーの豆知識

事業所委員が参加する研修、同委に選定の裁量あり

この記事の要約

従業員の代表機関である事業所委員会の活動に必要な経費は企業が負担しなければならない。これは事業所体制法(Betriebsverfassungsgesetz)40条1項に明記された決まりであり、事業所委員が参加する研修の費 […]

従業員の代表機関である事業所委員会の活動に必要な経費は企業が負担しなければならない。これは事業所体制法(Betriebsverfassungsgesetz)40条1項に明記された決まりであり、事業所委員が参加する研修の費用もこれに含まれる。

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ところで、同じテーマの研修が複数ある場合、事業所委は期間が最も短く、料金も低い研修に参加し、会社負担をできるだけ軽減しなければならないのだろうか。この問題に関する係争でヘッセン州労働裁判所が5月に決定(訴訟番号:16 TaBV 226/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは金属業界に属する中堅企業の事業所委員会。同委は2010年に初めて事業所委員に選任されたK氏を、金属労組が催す事業所委員会の基礎知識に関する1週間のセミナーに参加させた。翌年1月23日から2月4日にかけて前年のセミナーの後続セミナーが開かれるため、K氏を参加させようとしたところ、雇用主は期間が長く料金(2,778ユーロ)も高いとして承認を拒否。民間企業W社が同じテーマで開催するセミナーの方が期間が短く、料金も約200ユーロ安いとして、こちらに参加するよう命令した。

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原告はこれを不当として提訴した。

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第1審のヴェッツラー労働裁判所は原告の訴えを認め、第2審のヘッセン州労裁も1審の決定を支持した。裁判官はその理由づけのなかで、事業所委員の参加するセミナーを事業所委が選定する際は企業の財務力やセミナーの費用対効果を考慮する必要があるものの、ある程度の裁量も認められていると指摘。事業所委には最も安いセミナーを選択する義務はないとの判断を示した。そのうえでさらに、11年1~2月のセミナーは◇前年のセミナーと連続性がある◇講義しか行わないW社のセミナーと異なって参加者によるワークショップも行われる――ことなどを挙げ、事業所委が組合系のセミナーを選択したことには妥当な理由があると結論づけた。抗告は認めなかった。

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