自動車大手の独ダイムラーは9月25日、カーエアコン用の新規冷媒として2013年までに導入が義務づけられている「R1234YF」の採用を中止すると発表した。実際の使用環境に近い条件で独自にクラッシュテストを実施したところ、事故の衝撃で引火することが確認されたため。従来の冷媒(R134a)を使用した対照試験では引火が起きておらず、安全を最優先して引き続きR134aを使用する。R1234YFに対し正式に反旗を翻した自動車メーカーは同社が初めてだ。
\欧州連合(EU)では地球温暖化防止策の一環として、これまでカーエアコン用冷媒として使われてきた代替フロン(R134aなど)に代わり、地球温暖化係数(GWP)150以下の冷媒を使用することが11年から義務化された(12年末までは猶予期間)。ドイツの自動車メーカーはこれを受けて、米ハネウェルとデュポンが共同開発したR1234YFの採用を決めた。ハネウェルによると、R134aのGWPが1,430に達するのに対し、R1234YFはわずか4にとどまる。
\ただ、同冷媒は従来の不燃性冷媒と異なり、わずかながら燃焼性がある。R1234YFを開発したハネウェルとデュポンは安全性を強調し、技術監査機関TUeV Rheinlandも「従来品と変わらない」としているが、連邦環境庁(UBA)やドイツ環境支援協会(DUH)は、衝突事故などで引火する恐れがあるとして懸念を示す。
\ダイムラーは「規格に従って実験室で測定した値では安全性の確証が得られない」として、国際規格よりもはるかに厳しい独自の品質試験法を開発。「走行中の自動車同士の正面衝突事故で冷媒管が破損し、排ガスシステムの高温部品近くで冷媒が漏れだす」という状況を模して測定を行ったところ、R1234YFが高温のエンジンルーム内で引火性を持つことが確認されたという。
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