労働契約書に残業手当を支給しないとの規定があっても、被用者には多くの場合、同手当を請求する権利がある。これについては2012年2月29日号に掲載した本コラムですでに紹介した。では、給与の一部を成功報酬の形で受け取る社員にもこの原則は当てはまるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦高等裁判所(BAG)が6月に判決(訴訟番号:5 AZR 530/11)を下したので、ここで取り上げてみる。
\裁判を起こしたのは被告企業で弁護士の人材斡旋業務を担当していた元社員。労働契約書には労働時間を週40時間、基本給を月2,200ユーロとし、「若干の残業代は基本給に含まれている」と明記されていた。また、斡旋が成立した場合は、斡旋料金の10%を成功報酬として支給することが記されていた。同社員が受け取った成功報酬の額は2006年が7,916.60ユーロ、07年が1万4,665.89ユーロ、08年が1万2,965.52ユーロ、09年(1~2月)が400ユーロだった。
\同社員は09年2月末付で退社したのち、残業代が支給されなかったのは不当だとして総額3,603.54ユーロの支払いを請求。提訴した。
\第1審は原告勝訴を言い渡したものの、第2審のニュルンベルク州労働裁判所は逆転敗訴を言い渡し、最終審のBAGも2審判決を支持した。判決理由で裁判官はまず、残業代が基本給に含まれるとした労働契約の取り決めは、定義が不明確で理解不能な契約規定を無効とした民法典(BGB)307条1項の規定に基づき無効だと言い渡した。
\そのうえで、労働時間に応じて給与を受け取る被用者には原則的に残業手当の請求権があるものの、原告の場合は基本給(労働時間に基づき支給)に対する成功報酬額の比率が高いと指摘(06年:30%、07年:55%、08年:49%)。そうした被用者には残業代の請求権がないとの判断を示した。同比率が何パーセント以内であれば請求権が発生するかについては判断を提示しなかった。
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