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2012/10/10

経済産業情報

鉄鋼業界「効率改善はまだまだ可能」

この記事の要約

鉄鋼業界は二酸化炭素(CO2)排出量やエネルギー効率をさらに改善することが可能だ――。著名な物理学者・環境学者で元連邦議会議員のエルンスト・ウルリヒ・フォン・ヴァイツゼッカー博士は『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、 […]

鉄鋼業界は二酸化炭素(CO2)排出量やエネルギー効率をさらに改善することが可能だ――。著名な物理学者・環境学者で元連邦議会議員のエルンスト・ウルリヒ・フォン・ヴァイツゼッカー博士は『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、FTD)』紙のインタビューでこのような考えを提示。スクラップを原料とする鉄鋼生産の強化、効率の高い生産方法の導入、斬新な事業モデルの採用などによって「CO2削減効果を5倍に引き上げることも夢物語ではない」としている。

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環境負荷を引き下げるために最も有効な手段として同博士は、鉄スクラップを原料とする鋼材生産を挙げた。これは、電気炉法と呼ばれる方法でリサイクルするもので、鉄鉱石と石炭(コークス)から高炉で還元する製鉄法に比べ、CO2排出量とエネルギー消費量をともに大きく抑えることができる。米Nucorは鉄リサイクル事業強化によって2003年からこれまでにエネルギー消費量を17%削減したほか、リサイクル工程の改良に取り組み、「スクラップからでは製造不可能」とされていた高品質の鉄鋼生産に成功したという。

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独鉄鋼メーカーについては、世界的にもトップレベルのエネルギー効率を実現していると高く評価する一方、欧州市場の低迷や新興国メーカーの台頭などを背景に、特殊鋼など高い技術が必要な分野にターゲットを絞り競争力を維持する必要があると指摘する。また、橋梁用鉄鋼材などの鉄鋼製品を自社保有とし、自治体や企業に「リース」することで数十年にわたって管理料などを徴収するといった、従来の常識を打ち破るビジネスも考えられるとしている。

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鉄鋼産業拠点としてのドイツの地位を維持するための方法としては、鉄鋼業界から徴収したエネルギー税を、鉄鋼生産量や従業員数に応じて業界に全額還元することを提案。これにより国内生産や雇用に注力する企業を支援できるとしている。

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