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2012/10/10

ゲシェフトフューラーの豆知識

復職支援措置、効果がない場合は解雇可

この記事の要約

病気で長期休業している被用者がいる場合、雇用主は復職に向けた支援措置を取らなければならない。これは第9社会法典(SGB IX)84条2項に定められたルールで、ドイツ語でBetriebliches Eingliederun […]

病気で長期休業している被用者がいる場合、雇用主は復職に向けた支援措置を取らなければならない。これは第9社会法典(SGB IX)84条2項に定められたルールで、ドイツ語でBetriebliches Eingliederungsmanagement(BEM)という。

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では、この措置を行ったにも関わらず、被用者の復職見通しが立たない場合、雇用主は解雇を通告できるのだろうか。この問題をめぐる係争でマインツ州労働裁判所が7月に判決(訴訟番号:10 Sa 685/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは精神障害者の介護施設に勤務していた介護士。同介護士は2007年秋にてんかん発作を起こし、長期の病休に入った。雇用主は復職を支援するため、08年11月から09年2月にかけて医師の指導のもとで同介護士の「慣らし勤務」を実施。勤務時間を段階的に増やしていく措置を取った。だが、施設の障害者を運ぶといった発病前の業務を十分にこなすことはできず、医師は復職不可能との鑑定を下した。

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介護士は慣らし勤務の後、再び長期の病休に入ったため、雇用主は2011年3月、従業員代表機関の了承を得たうえで同年9月末日付で解雇することを通告。原告はこれを不当として提訴した。

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第1審のコブレンツ労働裁判所は原告勝訴を言い渡したものの、第2審のマインツ州労裁は1審判決を破棄。解雇は正当だとの判断を示した。判決理由で裁判官は、原告が発病前の業務を不完全にしかこなせないことを指摘。債務者(ここでは原告)は義務を完全に果さなければならないとした民法典266条の規定を根拠に被告には原告の雇用を続ける義務はないとの判断を示した。また、雇用主は原告の業務を軽減したり他の業務を割り当てることができない旨を包括的かつ具体的に説明したとして、被告が実施したBEMは不十分だったとする1審の判断を退けた。

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最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。

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