欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2012/10/31

ゲシェフトフューラーの豆知識

倒産企業買収で受け皿会社の濫用は違法

この記事の要約

他社の事業を買収した企業は買収の時点で買収対象事業で有効だった被用者に対する権利と義務を継承しなければならない。これは民法典(BGB)613a条に明記されたルールである。では、買収対象企業の被用者を一度、受け皿会社に移籍 […]

他社の事業を買収した企業は買収の時点で買収対象事業で有効だった被用者に対する権利と義務を継承しなければならない。これは民法典(BGB)613a条に明記されたルールである。では、買収対象企業の被用者を一度、受け皿会社に移籍させたうえで引き継ぐ場合はこのルールが適用されないのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が25日に判決を下したので、ここで取り上げてみる。

\

裁判は2007年4月に倒産したA社に勤務していた社員が、A社を買収したB社を相手取って起こしたもの。B社は08年3月、A社の資産を買収するほか、従業員1,600人のうち1,100人を正社員、400人を有期契約社員として採用することで管財人、金属労組IGメタルと合意した。

\

5月3日になってA社の従業員集会が開かれ、従業員は同社との労働契約を同月末日付で解除し、6月1日付で受け皿会社に移籍する契約を締結。また、B社との間で計4つの労働契約を結んだ。4つのうち1つは正社員として採用するというもので、残り3つは契約期間の異なる有期契約社員として採用するというものだった。

\

原告は5つの契約すべてにサインし、B社は20カ月の有期雇用契約で原告を6月1日から採用。原告は受け皿会社に6月1日に30分、在籍したのちに、B社での勤務を開始したが、09年6月になって、有期雇用契約は違法だとして提訴し、正社員としての採用を要求した。

\

原告は下級審のケルン州労働裁判所で勝訴、最終審のBAGも同判決を支持した。判決理由で裁判官は、受け皿会社に原告が在籍した時間が極端に短いことを指摘。これはBGB613a条で定められた買収主体企業の義務を回避するための不当な措置だとの判断を示し、原告を正社員として採用するよう命じた。

\

\

■ポイント

\

原告はA社の正社員だったため、A社の事業を継承したB社はBGB613a条の規定(他社の事業を買収した企業は買収時点に買収対象事業で有効だった被用者に対する権利と義務を継承しなければならない)に基づき、原告を最初から正社員として採用しなければならなかった。

\