元の製品より品質や価値を落として再利用する(ダウンサイクル)のが普通だった古ゴムを、付加価値を持つ新しい樹脂に再生(アップサイクル)する技術を、フラウンホーファー環境・安全・エネルギー技術研究所(UMSICHT)が開発した。「EPMT」と名付けられた新たな樹脂複合材(特許および商標権取得済み)の製法は、粉砕した古ゴムに熱可塑性樹脂と助剤を混合して加熱するというもので、再生したゴムは取っ手やキャスターの車輪、注射針の保護キャップ、自転車のバルブキャップなどに使用できるという。
\UMSICHTによると、世界のゴム消費量は約2,200万トンに達する。しかし、ゴムはその分子構造上、素材の品質や機能を維持したまま再利用することが困難で、用途は◇石炭の代わりの燃料(サーマルリサイクル)◇再生ゴムやゴム成型品、舗装材、建材などの原料(マテリアルリサイクル)――などに限られていた。
\UMSICHTのチームはこうした事情を踏まえ、ゴムの付加価値を引き上げる再生法の開発に取り組んだ。チームが開発したEPMTは(1)古ゴムをまず直径3ミリメートル程度の粒状にする(2)液体窒素で冷却した後、エラストマーパウダーに粉砕(3)熱可塑剤(ポリプロピレン)と助剤を混ぜて加熱――という手順を踏んで作製する。ゴムの占める割合は最大8割で、助剤や熱可塑剤の種類や配合比率を変えることで、弾性、剛性、硬度などの特性を自由に制御できるという。
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