事業所体制法(BetrVG)40条2項には、従業員の利害を代表する事業所委員会(Betriebsrat)の活動に必要な経費を雇用主は負担しなければならないと明記されている。逆にいえば必要性のない経費であれば負担義務がないことを意味する。この問題をめぐる係争で通常裁判の最高裁である連邦司法裁判所(BGH)が10月25日に判断を示したので、ここで取り上げてみる(訴訟番号: Ⅲ ZR 266/11)。
\裁判は組織再編方針を打ち出した企業(A社)の事業所委員会を相手取って、同委からコンサルティングを依頼された企業(B社)が起こしたもの。
\A社は2007年、国外への事業移管や人員削減を含む組織再編計画を発表した。事業所委はこれを受け、リストラ計画などの交渉で必要なアドバイスを受けるためにB社にコンサルティングを依頼することを決定。事業所委員長はB社との契約に署名した。
\B社はコンサルティングの終了後、総額8万6,762.90ユーロの支払いを事業所委員長に請求。これを受け同委員長が雇用主(A社)に請求書を回したところ、雇用主はサービス内容の明細書に問題があり、実際に明細書通りのサービスを行ったかどうかが不明だとして支払いを拒否した。
\事業所委はこれを受け、同委を通さず直接A社に支払いを請求するようB社に要請。B社は受け入れを拒否し、事業所委と事業所委員長、事業所副委員長を相手取って裁判を起こした。
\第1審と第2審は原告B社の訴えを棄却。一方、最終審のBGHは第2審では十分な審理が行われていなとしてフランクフルト高等裁判所に裁判を差し戻した。
\判決理由で裁判官は、B社へのコンサルティング委託が事業所委の業務に必要であったのであれば、A社はB社に支払いを行わなければならないと指摘。また、必要なかったのであれば、事業所委員長は権限がないにもかかわらずB社との契約を結んだことになるため、民法典179条に定められた無権代理人(Vertreter ohne Vertretungsmacht)の原則に基づき、自らの責任でB社への支払いを行わなければならないとの判断を示した。ただし、コンサルティングの必要性がないことをB社が認識していた場合は、同委員長に支払い義務は発生しないとしている。
\ \■ポイント
\ \差し戻し審ではまず、事業所委員会がコンサルティングを委託する必要があったかどうかを審査。必要がなかったことが確認された場合は、事業所委員長に支払い義務があるのかどうかを確定する。
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